日本の相続㊴ 相続財産にならない生命保険金


被相続人(故人)が保険金受取人として指定されている場合と、妻や子などの相続人が保険金受取人に指定されている場合とでは、保険金請求権の取り扱いが異なります。被相続人が保険金受取人に指定されていれば、保険金請求権は被相続人の権利ですから、これも遺産であり遺産分割の対象となります。相続人がこの生命保険を受け取ると相続放棄はできなくなります。

父が多額の負債を抱えて死亡し、保険金受取人に指定された相続人(子)が生命保険金を受け取った場合も、相続放棄ができないのではないかと疑問が生じます。保険金請求権が相続財産に含まれるかどうかという問題ですが、それは保険金受取人の形態によって異なります。保険金受取人が特定の相続人(妻や子など)に指定されている場合は、生命保険契約の効果として保険金受取人が保険金請求権を取得するので相続財産には含まれず、相続放棄した相続人でも、この保険金請求権を取得します。例えば、1億円の負債を抱えて死亡した父が、他に財産はなく、子に1億円の生命保険契約をしていた場合、子は相続を放棄して1億円の債務を継承せず、1億円の生命保険だけを受け取ることが可能となり、債権者にとっては甚だ面白くない結果となります。(785)

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