不動産賃貸からの純損失
不動産の賃貸収入から関連必要経費を差し引いた後の金額が純利益の場合は、他のすべての所得と合算されて通常の所得税の対象となります。必要経費差引後の金額が純利益ではなく、純損失(赤字)になった場合はどうなるのでしょうか。純損失を給与、利子、配当、自営業事業所得などの他の所得と損益通算(相殺)できれば、税金が少なく計算されて節税になる筈です。ところが、純損失になったら誰でも節税できるわけではなく、調整総所得(ほぼ年収に相当)が15万ドル以上の高額所得者は、米国税法上「消極的損失の制限」という規定が適用されて、純損失と他の所得との相殺の恩恵を全く受けられません。年収が10万ドル以上15万ドル未満の場合、純損失は段階的減額の対象となり、年収が10万ドル未満は、全額(ただし上限2万5000ドルまで)の損益通算が認められます。
不動産賃貸からの純損失と他の所得との損益通算が認められるためには、高額所得を得ていないことという条件の他に、納税者が積極的に賃貸活動に関与していることという条件を満たす必要があります。管理会社が間に入っている場合でも、テナントの募集、テナントとの交渉、修理の手配などに関して常に決定権を行使していれば、賃貸活動に関与していることとなります。何もかも管理会社まかせという場合は、積極的に賃貸活動に関与したことにはならず、相殺は認められません。損益通算が認められなかった純損失は、次年度以降へ無期限に繰り延べられて、他の所得との相殺に役立ちます。(605)