相続の限定承認
土地や建物などのプラス財産と借金などのマイナス財産を、相続財産としてすべて一手に引き受けるという一般的な相続方式のことを単純承認といいます。単純承認は、裁判所への手続きを必要とせずに相続を実行できます。借入金などの負債が多いため、あるいは相続トラブルを避けるため相続権を放棄したい、またはプラス財産の限度でしかマイナス財産の相続はしたくないなどの場合には手続きが必要です。相続財産の中から負債を支払って、それでも財産が残っていれば相続するという、留保付きの相続方式のことを相続の「限定承認」(民法922条)といいます。限定承認を行うには、相続があったことを知った日から3カ月以内の熟慮期間に、管轄の裁判所への申請手続きと、法定相続人全員の合意が必要になります。
被相続人が死亡した直後は、葬儀や初七日であわただしく、一般に相続の話が出てくるのは四十九日過ぎという例が多いようです。それから相続財産の調査にかかり、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれいくらになるか集計して把握する必要があります。その結果、単純承認をするか、相続放棄あるいは限定承認をするかを決めなければなりません。財産が多く、また権利関係が複雑であったりすると、3カ月の期間はすぐに過ぎてしまいます。そのため、この3カ月の間に調査が終わりそうにもない場合には、家庭裁判所に期間の延長を求めることができます。(642)