遺留分制度
遺留分制度は、相続人に最低限の相続を保証する制度です。故人の最後の意思を尊重して、遺言通りに財産を振り分けるのは望ましいことです。遺言による指定は、法律で定めた相続基準に優先しますが、例外として、一定範囲の相続人には最低限度の相続分を法律で保障し、それが侵害されている場合には取り戻しの請求ができることになっています。例えば遺族(相続人)には歓迎できない他人へ、財産のすべてを渡すという遺言が残された場合、妻子は自宅を明け渡してすべての財産をその他人(受遺者)に与えなければならず、相続権があるのにもかかわらず、遺産を相続できないという結果を招きます。故人の自由な意思を無制限に認めると、非人道的とさえ言えることが世の中にまかり通ってしまいます。
そこで日本の民法は、遺族の生活保証や財産形成への貢献を考慮して、財産が自由に処分されることによって遺族の生活が脅かされることがないよう、相続権の最低限の保護を定めた「遺留分制度」を設けています。遺留分は、故人が自分の意思で処分できない財産の割合であり、故人の財産処分の自由と相続人の保護の調和を図り、一定割合の相続財産を相続人に留保することにより、遺言に対してある程度の制限を加える効果があります。遺留分がある相続人は、侵害された遺留分について減殺請求という形で返還を求めることができます。(630)