日本の相続税103-相続 形見分け
<日本の相続(103)-形見分け>
形見分けとは、故人の愛用していた衣類や所有品を親族や友人に分けることで、習慣として行われているものであり、法律上の根拠はなく相続の問題ではありません。
形見分けで争いになるのは、それが相続財産の処分なのか、単なる形見分けなのかの区別です。形見分けとして財産を処分したつもりでも、それが相続財産の処分とみなされて、その後に相続放棄をしようとしても認められないことがあります。相続財産を処分すると、財産と債務を無条件、無制限に受け入れる単純承認を選択したこととみなされるからです。
形見分けと相続財産の処分の区別は、財産が市場取引の対象となる価値があるかどうかで判断されます。従って、故人が愛用していた衣類や万年筆、特別高価でない時計などで、親子や親族の情愛の発露といえるような主観的価値が主とみられるものであれば、財産の処分とはなりません。美術品や骨董類、宝石などで市場取引の対象となり得るものは、故人が生前に「自分が死んだら形見として与える」と言ったとしても、安易に分け与えるべきではありません。形見分けで与えた衣類について、市場取引の対象にとなり価値が高いため、財産処分に当たるとした判例があります。(208)