プロベート手続きと合有所有財産(Joint Tenancy)
- At August 11, 2014
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米国で財産を遺して人が亡くなると、遺産は、一旦、プロベート(検認)裁判所の監督下に置かれます。原則として遺産を引き渡すためには、プロベート手続きを経る必要があるためです。遺言がある場合とない場合とでは手続きに違いがあり、費やされる時間も6ヵ月ないし3年を必要とします。プロベート手続きが長引けば、弁護士費用が大幅に増えることを覚悟しなければなりません。
プロベート手続きを経ることなく財産を相続人に引き渡すことができれば、時間と費用の節約になります。その一方法が、資産の所有形態を合有所有(Joint Tenancy)にすることです。合有所有者の一人の死亡によって相続が発生した場合、生き残った方の合有所有者が自動的にその持分を継承できます。この方法は、プロベート手続きを避ける手段として、銀行口座、不動産、株などの様々な資産について広く用いられています。資産を合有所有する者は夫婦に限定されておらず、夫婦以外の2名以上の複数名で用いることも可能です。プロベート手続きを回避しても、必ずしも遺産税の回避にはつながらないことにご注意ください。
合有所有財産の設定にあたって拠出した資金と、その対価として取得した持分が一致しない場合には、自己の持分に応じた以上の資金を拠出した者から、自己の持分に応じた資金を拠出していない者に対する贈与として、例えば親から子への贈与として、米国においても日本においても贈与税の課税の対象となることに注目してください。(471)
遺言がある場合のプロベート(検認)手続き
- At August 11, 2014
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遺言がない場合と比べて遺言がある場合、米国のプロベート(検認)手続きにかかる時間は大幅に(1~3年から6ヵ月に)短縮され、より早い確実な相続分配の執行がなされます。遺言がある場合のプロベート手続きは、まず遺言執行人が遺言書と死亡証明書をプロベート裁判所に提出することから始まります。裁判所はその遺言の有効性を確認します。
次に、遺言で遺言執行人に指定された者が認証を受けるため申請書を提出して、権限付与書(Letter of Grant)の発行を受けます。これにより、遺言執行人が任命を受けて遺言執行手続きを遂行することができます。遺言執行人は財産を調査特定し、財産目録と名義証書を提出します。財産の評価は公正市場価格で行います。被相続人の死亡時点で弁済すべき債務を、遺産の中から支払い、さらに債務弁済後の遺産に課せられる遺産税(Estate Tax) の申告と納税を行います。遺言執行人は、故人に代わって残った財産を、各相続人に遺言どおりに分配処理します。
遺言には、州法とは異なる遺産分割方法の指定、法廷相続人以外への遺贈、慈善団体への遺贈、相続人の廃除、未成年相続人に対する後見人の指定などの事項に関する意思表示が明記されます。すなわち遺言には、誰にどの財産をどのように分配するかが記述されています。(470)
遺言がない場合のプロベート(検認)手続き
- At August 11, 2014
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米国のプロベート(検認)手続きとは、被相続人が残した財産をどのように分けるかについて、検認裁判所(Probate Court)の監督のもとで行う法律手続きのことです。遺言がある場合とない場合とでは手続きに違いがあります。
遺言を遺さずに死亡した場合、無遺言相続法(州法)に従って相続手続きが進められます。まず、遺産管理人になる地位を有する者が自身を遺産管理人と指定する旨を記載した申請書を検認裁判所へ提出し、それに基づいて申請者に対して権限付与書が発行され、相続執行手続きが可能となります。遺産管理人は遺された財産を調査し、特定し、公正市場価格で評価します。死亡時点で返済すべき債務を被相続人の遺産の中から支払い、更に債務返済後の遺産に課せられる遺産税(Estate Tax)の支払いを済ませます。その後に残された財産を、前述の無遺言相続法の配分割合で分配します。
遺産は最終的に法定相続人に分配されるものの、通常、州の検認裁判所での手続きに1~2年またはそれ以上を必要とします。そのため遺言がない場合、相続分配を確実に、早く執行させることは望めません。時間がかかる分、弁護士等専門家の手数料も高くなります。遺言は、相続の執行を円滑かつ速やかに、そして確実に確保するために是非とも用意しておくことが勧められます。(469)
有効な遺言(米国)
- At August 11, 2014
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米国では州ごとに有効な遺言の要件が定められています。遺言が有効と認められるための一般的要件は次の通りです。
1. 遺言者が心神喪失状態にないこと。
2. 遺言者が18歳以上であること。
3. 遺言者が少なくとも一以上の実在する有形財産を有していること。
4. 1人以上の遺言執行者を選任すること。
5. 遺言者は遺言に署名をして作成年月日を記入すること。
6. 2人以上の証人が遺言に署名すること。
証人は、心神喪失状態にないこと、そして18歳以上の者でなければなりません。証人は利害関係者以外の者であり、その遺言によって財産を受け継ぐ権利が与えられてはなりません。証人は遺言者の署名を見届けた後、証人自身も署名します。カリフォルニア州、メイン州、ミシガン州、ニューメキシコ州、ウィスコンシン州の5州では法定遺言の書式が定められていて、必要事項を記入することで信頼性の高い遺言を容易に、そして安易に作成できます。必ずしも遺言を公証してもらう必要はありませんが、通常、遺言者と証人が、署名入りの自己証明供述書(Self-proving affidavit)と呼ばれる書類に公証を受けておけば、後のプロベート手続きで証人の証言を不要とする扱いが受けられます。(468)
海外居住者による相続手続き
- At August 11, 2014
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日本で親が財産を遺して亡くなり、相続人である子が一定額を超える遺産相続を受けることになった場合、相続税申告書を提出する必要があります。その際、場合によっては添付提出を求められる可能性のある書類として戸籍謄本、印鑑証明書、住民票があります。戸籍謄本は、被相続人の死亡や相続人の存在を確認するために必要とします。印鑑証明書は、遺産分割協議書に実印を押すために必要です。住民票は小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けるために必要とします。
相続人が外国籍の場合や海外居住のため日本に住所がない場合、日本での相続手続はどうすればよいのでしょうか。
外国籍の相続人は、相続人であることを自ら宣誓し、公証人の認証を受けた「宣誓供述書」を作成し、それを戸籍に代わるものとして使用できます。相続登記を行うには、宣誓供述書を日本語に翻訳証明付きで翻訳をして、日本においても公証役場で認証を受ける必要があります。日本国籍の相続人が海外居住の場合、印鑑証明書に代わるものとして、大使館や領事館などの日本政府の在外公館によって発行されるサイン証明を使用します。同様に住民票に代わるものとして、在外公館によって3ヵ月以上の現地滞在者に発行される在留証明書を必要とします。(467)
日本の親からの相続は米国遺産税がかかるか? Inheritance from Parent
- At December 13, 2013
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<日本の親からの相続は米国遺産税がかかるか? Inheritance from Parent>
日本で親が亡くなり、米国の居住者である子が財産を相続した場合の税金がどうなるか考えてみます。日本で財産移転が起こったため日本の相続税を必要とすることは分かりますが、米国の遺産税(Estate Tax)は課せられるのでしょうか。その答えは、親の遺した遺産の中に一定の米国内財産があるかどうかによります。課税対象となるのは、米国不動産や車などの有形資産、米国法人発行の株式、米国債券です。非居住外国人(親)名義の米国銀行預金や生命保険金は非課税となります。課税対象となる財産があっても、必ず遺産税が発生するとは限りません。日米相続税条約による米国遺産税の減免措置が適用されるためです。
米国居住者が受け継いだ遺産が日本国内財産だけの場合、米国遺産税の申告・納税を行う必要はありませんが、フォーム3520に相続財産の内容を記入して、IRS(内国歳入庁)へ情報報告をする義務があります。
日本の相続税の取扱上、相続人が日本国籍保持者であるか外国籍であるか、相続財産が日本国内財産であるか国外財産であるかは、一切関係ありません。国内、国外を問わずすべての財産が日本の相続税の対象となります。また、相続人が米国の永住権保持者であるということは、日本の相続税の計算上何の意味も持たず、影響を及ぼすことはありません。日本の相続税を免れるのは、火相続人である亡くなった親と相続人である遺族が、共に5年超海外在住であり、日本国外財産が関わる場合のみです。(442)
贈与税・遺産税の婚姻控除 Marital Deduction (Tax Free Transfer to Spouse)
- At December 13, 2013
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<贈与税・遺産税の婚姻控除 Marital Deduction (Tax Free Transfer to Spouse)>
米国市民である場合、配偶者間の贈与および相続は、贈与税も遺産税も一切課せられることなく非課税で財産移転ができます。 税法上、婚姻控除(Marital Deduction)と呼ばれ、法的婚姻関係にある夫婦間の財産移転は、生前、死亡時を問わず無制限に税金を課せられることなく行うことができるという規定です。この規定は、財産の贈与および相続を受ける側の配偶者の国籍が米国である場合にのみ適用されます。贈与を与える側、遺産を遺す側の配偶者が、米国籍であるか永住権を保持する外国人であるかは、一切無関係です。一方、永住権を保持する外国籍配偶者への贈与については、一定限度額以上が課税を受けます。すなわち、年間14万3000ドル(2014年)までの贈与は非課税です。この額を超える贈与は、さらに生涯非課税贈与額を適用すれば100万ドルまでについて課税を免れることが可能です。超過額は課税対象となります。
日本では夫婦間の相続は、法定相続分の2分の1、または1億6000万円のいずれか多額な方の金額を非課税扱いにすることが認められています。非課税の夫婦間財産移転に制限が加えられている日本と比べて、米国税制の婚姻控除はいたって寛大な規定です。 婚姻控除による夫婦間の無税贈与・相続という観点からは、永住権よりも市民権を取得した方が有利と言えます。贈与税・相続税の婚姻控除は、永住権放棄者の税務と並んで、永住権配偶者の間で米国籍を取得する者が増えている要因のひとつとなっています。(304)
生命保険金・死亡給付金―日本での課税 Japanese Taxation of Life Insurance
- At December 13, 2013
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<生命保険金・死亡給付金―日本での課税 Japanese Taxation of Life Insurance>
生命保険金・死亡給付金の日本での課税は、保険料掛け金を誰が負担していたか、保険金の受取人が誰であるかによって、相続税、所得税、あるいは贈与税のいずれか税金の対象となります。
相続税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)であった場合、相続人が受け取る保険金は相続財産に含まれ、他の相続財産と併せて相続税(10~55%)が課せられます。その際、法定相続人一人当たり500万円の特別控除が認められます。例えば、妻と子三人が遺された場合、保険金のうち2000万円までが非課税扱いとなります。雇用主が保険料を負担していた場合、被保険者(被相続人)が負担したことと見なされ、受取保険金は相続財産となります。
所得税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)ではなく、保険金の受取人(妻)である場合、受取人に所得税と住民税が課せられます。受取保険金の半額部分だけが「一時所得」として課税対象になるため、実質税負担は25%以下であり、最高税率55%の相続税と比べて有利となります。保険料の一部を被保険者(夫)が負担し、残りの部分を保険金受取人(妻)が負担していた場合は、保険料の負担比率で按分した金額がそれぞれ相続財産および一時所得となります。(267)
生命保険金・死亡給付金―米国での課税 U.S. Tax on Life Insurance
- At December 13, 2013
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<生命保険金・死亡給付金―米国での課税 U.S. Tax on Life Insurance>
相続税の納税資金として活用できる生命保険金・死亡給付金は、死亡者が非居住外国人である場合と米国籍・居住外国人である場合とで米国での税金上の取り扱いが異なります。
非居住外国人
非居住外国人の死により、米国の生命保険会社から生命保険金・死亡給付金が支払われた場合、米国で所得税や遺産税、贈与税が課税されることはありません。
米国籍・居住外国人
米国籍、居住外国人の死亡に伴って支払われる生命保険金・死亡給付金は、所得税の課税対象にはなりませんが、保険契約によっては連邦遺産税(Federal Estate Tax)の対象になる場合とならない場合とがあります。生命保険金・死亡給付金が遺産税の課税対象となるかどうかは、死亡した保険加入者(被保険者、例えば夫)が保険証書上、保険の所有者としての権利を有していたかどうかによります。生命保険の保険の所有者としての権利とは、保険契約の解約、保険金の受取人の変更、保険証書の譲渡、保険に基づく借入れの権利などに関する決定権を持っていることを指します。税金を回避するには被保険者に一切の権利がない生命保険の契約を締結することが必要です。既に契約している生命保険証書がある場合は、所有者としての権利や決定権をすべて相続人(妻)へ譲渡することにより、生命保険金・死亡給付金の支払いを連邦遺産税がかからないようにすることができます。ただし、死亡時から3年以上前に権利の譲渡が完了していなければなりません。(266)
贈与税―被保険者が夫、保険料負担者が妻、保険金受取人が子の場合のように、保険料負担者が被保険者(夫)および受取人(子)以外のときは、保険料負担者(妻)から受取人(子)に対して、保険金の贈与があったこととして、受取人(子)に贈与税(10~55%)が課せられます。
満期保険金と保険年金
- At December 13, 2013
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<満期保険金と保険年金>
米国滞在中に米国の貯蓄型の生命保険と個人年金保険に加入して保険料を支払っていた日本人が、日本帰国後もそれらの保険に継続加入し続け、満期を迎えました。満期保険金と保険年金の日米での税金上の取り扱いについて検討します。
米国での課税
生命保険の満期保険金や中途解約金を非居住外国人(日本の居住者)へ支払う際、保険会社は保険金から30%の源泉徴収税(所得税)を差し引いてIRS(内国歳入庁)へ納付し、差額の70%分を日本の受取人へ送金します。生命保険会社の保険年金は、終身または特定期間にわたって定期的に所定の金額が支払われる給付のことを指します。保険年金は、日米租税条約第17条の居住地国課税の原則に基づき、支払地である米国では非課税、居住地国日本での課税だけとなります。
日本での課税
日本では、満期保険金や中途解約金は、所得税または贈与税の対象となります。保険料の負担者と保険金の受取人が同一の場合、保険金は一時所得として所得税・住民税が課税され、確定申告を必要とします。受取額から払い込んできた保険料を差し引き、更に50万円を差し引いた残りの金額の1/2が課税対象額です。負担者と受取人が異なる場合は、贈与税が課せられます。受け取った保険金から基礎控除の110万円を差し引いた金額に適用税率を掛け合わせて贈与税を算出します。保険年金は、雑所得として所得税・住民税の対象となります。(265)