該当出国者 Covered Expatriate

<該当出国者 Covered Expatriate>

 永住権放棄者・国籍離脱者は、下記の3条件のいずれかに該当した場合、「該当出国者」(Covered Expatriates) と呼ばれ、みなし譲渡益の時価評価税(出国税)、繰越課税資産の源泉課税、相続贈与の受益者課税が適用となります。

(1)   放棄前・離脱前5年間の連邦個人所得税の平均確定税額が2013年15万5000ドル、2014年15万7000ドル(2015年以降インフレ調整)を超えている

(2)   放棄日・離脱日の前日時点の全世界純資産が200万ドル超であった、または、

(3)   放棄前・離脱前5年間の連邦個人所得税の申告納税への準拠について宣誓証明することができない

平均確定税額または純資産の金額が一定基準額を超えるか、税金納税申告義務の不履行があった場合、出国税の計算書をIRSへ提出して必要とされる税額を支払わなければなりません。放棄日・離脱日以降、繰越課税資産の源泉課税、相続贈与の受益者課税が無期限に適用となります。(237)

長期永住者の報告 Reporting Green Card Abandonment

<長期永住者の報告 Reporting Green Card Abandonment>

過去15年間のうち8年間以上グリーンカードを保持していた長期永住者が永住権を放棄する場合、永住権放棄者の税務について検討する必要があります。グリーンカードの保有が7年未満の短期永住者による永住権放棄の場合、心配する必要はありません。

永住権放棄日とは、行政上、司法上の執行による永住権返還日のことです。移民局または在外公館領事部にグリーンカードを返還し、移民局フォームI-407(永住権放棄報告書)が受理された日が放棄日となります。双方居住者が、租税条約の振り分け基準に基づいて相手国の居住者として扱われた場合、その日をもって米国永住権は失効したことと見なされます。フォーム8854(出国情報報告書)がIRSに提出されるまで、引き続き米国居住者であり続けるとする旧規定は廃止されました。

米国国籍保持者は、在外公館(大使館、領事館)に国籍離脱の申請をした日、国務省に移民法上の要件を満たして文書による国籍離脱の自発的要請を行った日、国務省が国籍喪失証明書を発行した日、あるいは、帰化によって取得した国籍の失効を連邦裁判所が決定した日のうち、最も早い日を国籍離脱日とします。(236)

永住権放棄  Abandonment of Green Card

<永住権放棄  Abandonment of Green Card>

2008年6月17日にブッシュ大統領の署名によって永住権放棄者・国籍離脱者に適用される従来の税務規定が全面的に改定されました。旧規定は、特定の放棄者・離脱者が出国後10年間にわたって連邦税の申告納税義務を負うというもので、2008年6月16日まで適用されていました。2008年6月17日以降適用となった新規定は、放棄者・離脱者に新設された「出国税」の納税を義務付けました。

放棄者・離脱者の「出国税」とは、全世界に所有する財産を出国日の前日に売却したと仮定して計算されるみなし譲渡益に対する時価評価税や課税繰延資産に対する源泉課税を指します。さらに、放棄者・離脱者が出国後米国居住者に対して行う財産移転にかかる遺産税・贈与税として、新たに「相続贈与の受益者課税」が導入されました。

旧規定では、出国後の米国滞在日数を計画的に制限することにより、放棄者・離脱者の連邦税の申告納税義務を合法的に回避することが可能でしたが、新規定の適用上、一定の放棄者・離脱者が時価評価税や源泉課税を避けることは、殆ど不可能です。米国外での滞在日数が多くなったため永住権保持者の意思に反して永住権を放棄せざるを得ない場合など、思いがけず多額の出国税が課せられることがないように十分気を付ける必要があります。(235)

永住権と贈与税 Permanent Residence and Gift Tax

<永住権と贈与税 Permanent Residence and Gift Tax>

永住権と市民権とを比較して、税法上の取り扱いが大きく異なるのが、配偶者間の財産の移転にかかる贈与税(Gift Tax)および遺産税(Estate Tax)の課税関係です。婚姻控除(Marital Deduction)と呼ばれ、法的婚姻関係にある夫婦間の財産移転は、生前、死亡時を問わず、税金が一切かからずに行うことができるという規定があります。この規定は、財産の贈与または相続を受ける配偶者の国籍が、アメリカ合衆国である場合にだけ適用されます。贈与する側、遺産を遺す側の配偶者の国籍は問わないのです。
永住権配偶者は、婚姻控除を使って無税贈与および無税相続を受けることはできません。永住権保持者が配偶者から贈与を受けると、外国籍配偶者のための年間非課税贈与額(2013年$143,000、2014年$145,000)が適用となります。この額を超える贈与は、生涯非課税贈与の枠($5,340,000)の未使用分を適用して課税を免れることができます。枠を使い切った場合は、贈与税が発生します。アメリカでは、贈与税の納税義務者は贈与を与えた側であり、受贈者が納税義務を負う日本とは逆です。(90)

日本住まいの永住権保持者 Resident Alien Residing in Japan

<日本住まいの永住権保持者 Resident Alien Residing in Japan>

永住権保持者は、日本に住んでいる場合でも税法上、米国居住者として扱われ、年間の全世界所得をアメリカでも申告する義務があります。日本で既に課税された所得を再びアメリカでも申告するため、同一の所得に日本とアメリカの両国で税金が課される二重課税が発生する可能性があります。ただし、アメリカ市民で海外在住者に適用される「海外役務所得控除」の規定が永住権保持者にも認められるため、またさらに二重課税防止措置である「外国税額控除」の規定の適用も認められるため、アメリカ側での税金を最小限にくい止めることが可能です。

「海外役務所得控除」は、外国(日本)での給与所得について8万ドルを特別所得控除の形で、所得から差し引いて課税免除とする規定です。フォーム2555に必要事項を記入して確定申告書フォーム1040に添付提出します。

「外国税額控除」は、既に日本で課税された所得に再度計算される連邦税を税額控除の形で、税額から差し引いて課税免除とする規定です。フォーム1116に必要事項を記入して確定申告書フォーム1040に添付提出します。(89)

永住権は居住者 Permanent Resident is Resident

<永住権は居住者 Permanent Resident is Resident>

税法上、グリーンカード(永住権)保持者は米国市民と同等の扱いを受けます。通常、アメリカに滞在する外国人は、「実質的滞在条件」の判定基準によって滞在日数が183日以上であれば居住者、183日未満であれば非居住者となります。永住権保持者は、この判定基準の適用外と定められていて、アメリカ滞在日数にかかわりなくたえず居住者とされます。

たとえば日本に帰国して一年中アメリカ国外にいたとしても、永住権の放棄をしない限り、米国税法上の居住者として扱われます。つまり、いったん永住権を取得すると、その後はアメリカ国内、国外のどこに住んでいても、年間の全世界所得をアメリカにおいて申告する義務が生じるということです。日本に帰国後、永住権保持者の収入は日本だけであり、アメリカでは収入がないため、連邦税の申告はしなくてもいいと考えるのは正しくありません。

既に日本で課税された所得を再びアメリカでも申告する場合、必ず二重課税が発生するとはで限りません。それは海外在住者に与えられる二重課税防止措置の作用によるためです。(88)

永住権

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