連邦修正の州への報告

IRSから送られてきた通知書によって、あるいは、自ら気が付いて、連邦税の申告書上収入や経費控除の金額に変更が生じることがあります。連邦税の修正申告書提出後、州税の修正申告をして、追加税金の納付をする必要があります。

州税務当局への修正申告書の提出期限は、修正の最終決定日以降30日ないし1年であり、次の通り州によって異なります。期限内に州の税務当局に報告書が提出されない場合、遅延申告ペナルティーが課せられます。

30日―コロラド州、ミネソタ州、ペンシルバニア州

60日―ルイジアナ州、オハイオ州、バーモント

90日―コネチカット州、ハワイ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州

120日―イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州

180日―ジョージア州、カンザス州、サウスカロライナ州

6ヵ月―カリフォルニア州

1年―マサチューセッツ州、オクラホマ州、バージニア州

連邦修正の内容が所得の減少または控除の増加であり、その修正を反映すると州税の還付となる場合、州からの還付が認められるためには、連邦税の還付金を受け取った証拠を提出しなければなりません。

修正申告によって支払う州税は連邦税の計算上控除が認められ、還付される州税は連邦税上課税対象となります。

 

修正申告

 

申告書を提出した後、収入の申告漏れに気付いた場合は、修正申告書(フォーム1040X)に変更項目の詳細説明を記入し、IRS(内国歳入庁)に報告して追加税金と延滞利息を支払う必要があります。修正申告は、収入の申告漏ればかりでなく、経費控除の記入漏れの修正にも使われます。追加控除が認められれば、過払税金の還付が可能となります。

銀行や役務提供先などから収入の支払調書フォーム1099が発行されていたのにもかかわらず、うっかりして適切な申告を怠っていた場合、後日IRSから所得の申告漏れによる追徴税の発生を知らせる通知書が送られてきます。通知書が正しければ、追徴税を支払います。通知書に間違いが含まれている場合、その間違いを指摘し、間違いの根拠となる証拠書類を提出しなければなりません。

IRS通知書は必要経費の控除を無視して、収入だけで税金を計算します。例えば、金融機関から発行されるフォーム1099-Bには、株や債券、ミューチュアル・ファンドの売却に関する情報が記載されています。納税者がこれらの金融商品の売却の申告を怠っていた場合、通知書は取得費を全く考慮せずに税金計算をするため、驚くほど高額な追徴税の請求となります。この場合には、IRSに対して金融商品の取得費の控除が認められるべきである旨を早急に文書で伝え、正しい譲渡益の計算を提出する必要があります。場合によってはキャピタル・ロスとなり、税金が還付されます。(541)

自営業の予定納税  

会社勤めではなく自営業の形で生計を立てている場合、自営業収入から関連するすべての必要経費を差し引いて事業所得を計算し、その金額を報告して税金を算出します。給与所得者は、給与が支給されるたびに所得税と社会保障税が給与から源泉徴収(天引き)されて、会社からIRS や州政府へ納められます。自営業者は、自営業税と呼ばれるソーシャルセキュリティーとメディケアの税金を自分で計算して、その税金と所得税とを加えて年4回に分けて予定納税の形でIRSや州政府に払い込まなければなりません。自営業の事業所得と予定納税が給与所得者の給与と源泉徴収に相当します。

予定納税によって前もって納められた金額が、確定税額(確定申告書で計算された税金額)と比べて1000ドル超不足していると、予定納税の過少納付加算税というペナルティーが課せられます。ただし1000ドル超の不足額があっても、年度内の源泉徴収および予定納税による納付額が確定税額の90%以上であれば、ペナルティーは生じません。年度終了前に確定税額を的確に予測するのは極めて困難である事実を考慮して、IRSは予定納税の安全圏規定(セーフハーバー・ルール)を定めています。すなわち、前年度の確定税額の100%(夫婦合算申告の調整総所得が15万ドル超は110%)以上を年内適時に納付してあれば、たとえ不足額が多額であったとしてもペナルティーを確実に回避できるという規定です。なお、過少納付加算税ペナルティーの計算には、3か月ごとにIRSによって公表される延滞利息・還付金利息のための法定利率(2015年は各四半期とも3%)が使われます。(537)

誰にでも認められる基礎控除

基礎控除は、配偶者控除、扶養控除とともに、人的控除(パーソナル・イグゼンプション)のひとつとして、米国籍、居住外国人、非居住外国人の区別なく、どの納税者にも無条件に差し引くことが認められている所得控除です。人的控除の金額は、毎年消費者物価指数に連動して更新されます。2015年度の金額は4000ドルです。年間収入が4000ドル未満であれば所得税は計算されないということです。

一定条件を満たす納税者は、さらに一人4000ドルずつの追加の人的控除(配偶者控除と扶養控除のこと)が認められます。この場合の一定条件とは、納税者が「米国籍、または、居住外国人であることであり、非居住外国人ではないこと」を指します。配偶者控除と扶養家控除が認められるためには、申告書フォーム1040を提出する必要があります。非居住外国人用のフォーム1040NRの提出者に認められる人的控除は基礎控除だけであり、配偶者控除と扶養控除は認められないことを意味します。

高額所得者は、人的控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除)について一人4000ドル全額が認められず、収入が増えるに伴い控除額は段階的に減額し、やがて消滅します。例えば、夫婦合算申告者の調整総所得が約30万ドルを超えると人的控除は段階的に減額し、約43万ドルに達すると全額否認となります。(529)

自宅内事務所の控除

自営業者あるいは被雇用者が自宅の一部を仕事で使っている場合、自宅内事務所の控除が認められます。控除の対象となる自宅内事務所の経費として、固定資産税や住宅ローン支払利子、水道光熱費、火災保険料、修繕費、減価償却費、維持管理費、賃借料(貸家住まいの場合)などが含まれます。経費合計額を、自宅内事務所の面積が自宅総面積(台所、洗面所、押入れ等を除く)に占める割合で按分配賦した金額が控除額です。

自宅事務所の経費は、フォーム8829にその明細を記入して申告します。控除が認められるための条件として、①占有的・恒常的使用、および、②雇用主の便宜があります(IRC (内国歳入法) 第280A条)。

「占有的使用」とは、住居の一定空間を事業用に占有使用していること言います。事業用と個人生活用に併用している場合は、占有使用ではないため否認されます。「恒常的使用「とは、住居の一定空間を事業用に常時使用していることを言います。偶発的・臨時的な使用だけの場合は、恒常的使用ではないため否認されます。「雇用主の便宜」は、従業員の場合にのみ適用となり、自営業には適用されない条件です。自宅使用が雇用主の便宜上役立つため、雇用主の要請に基づいて自宅を仕事に使用する場合に控除が認められます。単に自宅使用が勤務遂行上便利で役立つという理由だけでは、「雇用主の便宜」が欠けているため控除できません。(527)

還付税金に加算される利子

還付税金に加算される利子

 申告書の提出が遅れると遅延申告ペナルティーが計算され、税金の支払いが遅れると遅延納税ペナルティーが計算されることは周知の通りです。遅延納税にはペナルティーだけでなく、延滞利息が加算されます。延滞利息の利率は、IRSが短期財務省証券の利率を基準にして、3か月ごとに公表するIRS 利率を適用します。例えば、2015年の第1、第2四半期のIRS利率は年率3%です。

過払税金が還付金としてIRSから戻されてくる際、利子が加算されて払い戻されることがあります。IRS利率は、還付金に加算される利子の計算にも適用されます。還付金が支払われる際、いつでも利子が加算されるのではなく、還付金の払い戻しに一定以上の時間がかかった場合に限ります。源泉徴収や予定納税によって税金を払い込んだ金額が、確定税額を超えた場合、還付請求額を記載した申告書を提出します。修正申告書による還付請求も同様です。実際の還付日が還付請求日から45日以上経過した場合、還付金に利子が付いて戻ってきます。45日の起算日は還付請求日が申告書提出期限日以前の場合は提出期限日であり、還付請求日が申告書提出期限日以降の場合は還付請求日です。個人所得税の還付金には、延滞利息と同じ上記利率(同3%)が適用となります。(525)

 

国外在住者の申告期限―2か月間の自動延長

海外に住所がある納税者の連邦所得税の申告書提出期限は、通常の4月15日から自動的に2か月延長されて6月15日となります。この2か月の延長は、延長申請書フォーム4868の提出なしに認められます。「海外役務所得控除」を申告する米国市民権・永住権保持者、米国の不動産所得を報告する海外在住の非居住外国人、日本に帰国後前年度の申告書提出を必要とする非居住外国人などがこれに該当します。2か月の自動延長を受けた海外在住者が6月15日までに延長申請書フォーム4868を提出して認められる追加の延長期間は4か月間であり、最終提出期限は米国内にいる納税者と同じ6ヵ月後の10月15日です。自動延長が認められた海外在住者は、税法上の居所(Tax home)が海外にあるため2か月の自動延長を受ける資格がある旨を記述した書類を申告書に添付しなければなりません。

州税申告書の提出期限は、デラウエア州4月30日、ハワイ州4月20日、アイオワ州4月30日、バージニア州5月1日を除いて、ほとんどの州が連邦税と同じ4月15日です。また、州の多くが連邦税の期限延長規定を準用していますが、中には海外在住者の2か月自動延長を認めない州もあるため注意を要します。還付金が見込まれて追加納付が発生しない場合は問題ありませんが、期限延長の申請時点で追加納税が予想される場合は、連邦税の納付と同様、州税の延長申請書の提出と共に税金納付を行う必要があります。(523)

 

申告書の提出期限延長

何らかの理由で資料が揃わず申告書の作成が間に合わない場合は、申請によって提出期限の延長が認められます。延長申請書フォーム4868に必要事項を記入して、4月15日までにIRSへ提出すると、6ヶ月間、10月15日まで提出期限が延長されます。

延長申請書の提出によって認められるのは、あくまでも申告書の提出期限の延長であって、税金納付の延長ではないことにご注意ください。税金不足分は延長申請時に支払う必要があります。確定申告書の提出時に確定税額とそれまでの納付額とを比べて税金が精算されます。過払いのため還付金を受け取ることになる場合は問題ありません。納税不足のため追加納付になる場合は、延滞利息が、そして場合によってはペナルティーも課せられます。利率はIRSが3ヶ月ごとに公表するレートを適用します。2015年第2四半期のIRS利率は年率3%です。税金不足分が確定申告額の10%を超えた場合には、延滞利息に加えて遅延納付ペナルティーが課せられます。ペナルティーは税金滞納1ヵ月につき0・5%、ただし最高25%です。

州税についても提出期限の延長をする必要があります。還付が見込まれて追加納付が発生しない場合、連邦税の延長申請書が提出されていれば、別途州税の延長申請書を提出する必要がない州もあります。州税の延長申請書を必要とするのは、延長申請時点で追加納税が発生する場合との理解で正しいでしょう。(522)

学生ローン支払利息

税金の計算上利息の控除が認められる借り入れは、住宅ローン、投資借り入れ、学生ローンの3種類に限られます。学生ローンの支払利息は、所得調整控除の一つとして控除が認められます。納税者は毎年概算額控除または項目別控除のいずれか有利な控除方式を選択しますが、学生ローンの支払利息はどちらの控除方式を選択しても控除が認められます。大学、大学院、専門学校、職業訓練機関の授業料、教科書などの学費や寮費、食費、交通費を支払うための借り入れで、納税者、配偶者、または扶養家族の50%超パートタイムの教育費として支出することが必要条件です。控除の対象となる支払利息の上限額は、年間2500ドルです。ローン返済が終了するまでの全期間について何年でも控除が認められます。

高額所得者は所得レベルによる段階的削減規定の対象となります。すなわち、所得が独身6万5000ドル、夫婦合算申告13万ドルを超えると控除額は段階的に減額し、独身8万ドル、夫婦合算申告16万ドルに達すると控除額はゼロとなります。親の申告書上、扶養家族となっている場合、および、既婚者で個別申告をする場合は、学生ローン支払利息控除は認められません。後の年度に親の扶養家族でなくなった場合や、夫婦合算申告を選択するようになった場合には、控除が認められます。(520)

IRA個人退職基金口座 (私設の退職年金)

IRA(Individual Retirement Account, 個人退職基金口座) は、元来、会社の年金制度に加入できない自営業や中小企業勤務者のために設けられた退職後の資金形成のための貯蓄奨励制度です。納税者が銀行などの金融機関で開設し、その際、定期預金、ミューチュアル・ファンドなどの投資先を指定します。毎年一定額の資金を積み立てていって、口座に加算される利子や配当などの収益は非課税、拠出金は所得控除が認められるという優遇措置です。2014年、2015年の拠出限度額は5500ドル(50歳以上6500ドル)です。納税者が会社の適格年金制度に加入している場合、調整総所得が、夫婦合算申告は9万6000ドルと11万6000ドルの間、独身は6万ドルと7万ドルの間で、控除限度額がゼロになるまで段階的に減額します。

59.5歳の引退年齢以前にIRA口座から分配金を引き出すと、通常の所得税の他に10%の早期分配税と呼ばれるペナルティーが課せられます。不動産賃貸所得、利子・配当収入、株式売買キャピタルゲインなど、投資所得だけがあって働いていない納税者は、役務所得がないため所得控除のメリットを受けられません。

2014年のIRA控除を受けるための拠出期限は、2015年4月15日です。(518)

 

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