減価償却と一括償却制度
- At February 29, 2016
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事務用機器や什器備品、家具、車、不動産などの固定資産を購入して事業の用に供した場合、購入年度に取得費を必要経費として一括費用計上するのではなく、年の経過によって固定資産の価値が経済的、物理的に減少する期間にわたって配分計算して費用計上することを減価償却と呼びます。減価償却を計算するためには、資産の購入代金(取得費)、資産が使用できるであろう期間(耐用年数)、および、経費の算出方法(償却方法)についての情報を把握しなければなりません。米国税法上、固定資産は耐用年数を3年から40年までとする9種類の資産に分類されます。それぞれ使用期間を表わす「耐用年数」と、定額法または定率法の「償却方法」を適用して減価償却費を計算します。
減価償却の代わりに、購入年度に50万ドルまでの資産の「一括償却」制度による全額費用計上の控除をとることが選択によって認められます。所得税の大幅減税を通じて消費意欲を喚起し、米国経済の活性化を目指すために制定されたIRC(内国歳入法)第179条の特別制度で、2015年にも適用となります。この規定は営業収益が黒字で所得税を支払う状態にある自営業や中小企業に効果があります。自営業や企業は、一括償却制度を上手に利用することにより、大幅な節税を達成することが可能となります。(565)
子女世話費税額控除
- At February 23, 2016
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仕事に出ている間、子供の面倒を見てもらうために費やしたベビーシッター代、デイケア代、ナーサリー保育園・託児所代等は、税金計算上税額控除による税金削減の形で費用の一部が納税者に還元されます。給与や自営業事業所得などの勤労所得があり、12歳以下の扶養家族、あるいは、年齢に関係なく要介護の障害者や高齢者などのための世話費の支出を必要としている独身・既婚の納税者が該当します。さらに既婚者は、配偶者がフルタイム学生である場合に世話費税額控除が認められます。
収入レベルに応じて所得金額の20%ないし35%分が税額控除となり、最高2,100ドルの税金削減が得られます。総所得が増えるにしたがって適用率が段階的に下がる仕組みとなっていて、低所得者に対してより有利な計算になるようになっています。支払先の氏名や組織名、住所、ID番号をフォーム2441に報告する義務があります。ソーシャル・セキュリティー番号やITIN納税者番号を持っていないベビーシッターに子供の面倒を見てもらっている場合、申告書に必要事項を記入することがでできず、世話費税額控除は認められないことを意味します。(564)
特定世帯主を既婚者に適用する特例
- At February 15, 2016
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扶養家族を抱えた独身者は、特定世帯主(Head of Household)の税率表を適用すると、独身(Single)の税率表での計算よりも税額が少なくなって有利となることは知られています。例えば、課税所得を5万ドルと仮定して2015年の連邦所得税を計算すると、独身では8300ドルになるのに対して、特定世帯主では6846ドルとなり、1454ドルの節税になります。課税所得が高額になればなるほど、その差は大きくなります。
特定世帯主の申告資格を適用するための条件は、①独身者であること、②扶養家族を養っていて、納税者が扶養家族の年間生活維持費の50%以上を負担していることです。配偶者と死別して再婚していない場合、未婚の母または父の場合、独身者が養子縁組により扶養家族を養っている場合、親兄弟を養っている独身者の場合などが特定世帯主に該当します。
既婚者にひとつだけ特定世帯主の特例が定められています。納税者が非居住外国人(Nonresident Alien)と結婚していて、扶養家族を養っている場合です。働いていて収入のある納税者が米国市民、あるいは、居住外国人であり、扶養家族を抱えていて、配偶者のステータスが非居住外国人である場合に、夫婦個別申告のかわりに特定世帯主の税率表を適用することによる節税が認められます。非居住外国人の例として、Aビザ、Gビザ、Fビザ、Jビザ保持者、日本滞在の日本国籍保持者が考えられます。(563)
違法滞在者の所得税
- At February 08, 2016
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入国後滞在期限を超えて違法滞在している外国人が働いて得る所得、すなわち違法就労所得の課税について検討します。
税法上、合法就労所得と違法就労所得の間に区別は付けられておらず、IRSはすべての所得を報告して税金を納めることを奨励しています。所得が雇用主の簿外取引の支払いであるためフォームW-2やフォーム1099などの調書が発行されなくても、調書が正しく発行されたならば記載される金額を申告書に報告する義務があります。合法時に取得したソーシャルセキュリティー番号があれば、その番号を使います。番号を持っていない場合は、個人納税者番号(ITIN)を申請取得して使います。その場合は、社会保障制度への加入は許されず、ソーシャルセキュリティー税とメディケア税の支払いをする必要はありません。
違法就労者は、税務申告書上の報告内容が手がかりとなって移民局による手入れにつながるのではないかと懸念するでしょう。しかし、連邦税法上、納税者が税務申告書で報告した情報を、刑法犯罪に関与している場合を除いて、国土安全保障省(移民局)を含む政府の他機関へIRSが提供することは禁じられています(内国歳入法7213条)。従って税務申告書から違法滞在者が摘発されたり強制送還されたりすることはありません。IRSにとっては、すべての所得にかかる税金を徴収することの方が重要課題だからです。グリーンカード申請者は、違法年度分を含む過去の年度の確定申告書の提出を求められるため、留意が必要です。(562)
非課税通勤費手当の支給
- At February 01, 2016
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会社の従業員に通勤費手当を支給する場合のTransportation Fringe Benefit に関する米国税務について検討します。公共の交通機関や駐車場を必要とする自家用車、自転車などを利用する通勤者を対象とした適格通勤費手当という制度があります。毎年ある一定金額までの非課税通勤費手当の限度枠がIRSによって定められるというものです。電車、バス、フェリーなどの公共の交通機関の定期券、および、高速道路通勤客運搬車の費用は、2016年は月255ドルまでが非課税です。通常、実際に支出した費用が限度枠に満たない場合、実額までの金額が非課税で支給されます。限度枠を超えている場合、支給されるのは限度額の金額までです。従業員が非課税限度枠を超える手当の支給を受けた場合、超過額は課税対象の給与として見なされ、所得税、ソーシャルセキュリティー税およびメディケア税が課せられます。
自家用車による通勤者の場合、駐車代としての支給額のうち2016年は月255ドルまでが非課税手当です。自転車による通勤者の場合、改善費、修繕費、保管料としての支給額のうち月20ドルまでが非課税手当です。(561)
概算額控除(Standard Deduction)
- At January 18, 2016
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納税者は概算額控除(Standard Deduction)と項目別控除(Itemized Deduction)の2種類の控除方式のうちいずれか有利な控除方式を毎年選択することができます。標準控除、定額控除と訳されることもある概算額控除は、具体的に経費項目をあげずに所得から一定概算額の控除を差し引くという簡易方式です。項目別控除は個人消費生活にかかわる経費のうち、税法上認められるものを項目別に並べて、その合計額を控除するという方式です。
概算額控除の金額は、毎年インフレ調整が施され、独身、既婚者などの区分によって異なります。概算額控除の2016年の金額は次の通りです。カッコ内は2015年の金額です。
独身 6300ドル(6300ドル)
夫婦合算申告 12800ドル(12600ドル)
夫婦個別申告 6300ドル(6300ドル)
特定世帯主 9300ドル(9250ドル)
65歳以上の高齢者は、独身1550ドル(1550ドル)、既婚者1250ドル (1250ドル) の追加控除が認められます。
証拠書類がなくても認められて、いたって便利な概算額控除方式を選択できるのは、米国市民または一年中米国に滞在していた居住外国人に限ります。非居住外国人の場合は、概算額控除の採用は認められず、必ず項目別控除を適用しなければなりません。(560)
標準マイレージ・レート Standard Mileage Rate
- At January 11, 2016
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自分の車を会社の仕事または自営業の事業に使った場合、個人所得税の計算上、車の費用の控除が認められます。控除は「標準マイレージ・レート」または「実額法」のいずれかの控除方法を適用して計算します。会社から車の費用の精算を受ける場合も、標準マイレージ・レートか実額法が使われます。
標準マイレージ・レートは、車の事業用の走行マイルに標準レートを掛け合わせた金額を控除する簡便法です。この方法を適用すると、ガソリン代、保険料、減価償却費など、車の維持に要した実費の記録を保存しておく必要がありません。初年度に標準マイレージ・レートを選択すると、後に続く年度も同方法を継続適用できます。実額法を選択した場合は、後の年度に標準マイレージ・レートに変更することは認められません。
2016年の1マイル毎の標準マイレージ・レート(カッコ内は2015年のレート)は次の通りです。
ビジネス目的 54セント (57.5セント)
医療・転勤目的 18セント (23.5セント)
慈善目的 14セント (14セント)
実額法は、車のガソリン代、オイル代、保険料、修繕費、登録料、維持費、減価償却費など、実際に事業に使った金額を控除する方法です。車を事業だけに使用している場合は、全額控除の対象となりますが、一部を私用に使っている場合は、事業用マイル数が年間合計走行マイル数に占める割合で按分計算した金額が控除の対象となります。(559)
税金諸係数のインフレ調整―-2016年 Inflation Adjustment
- At December 28, 2015
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税金を計算する際に必要とする各種控除の基準額や限度額の2016年の金額がIRSによって発表されました。カッコ内は2015年の金額。
概算額控除――具体的な経費項目を挙げずに認められる一定概算額による簡便方式の控除。
独身 $6,300 ($6,300)
夫婦合算申告 $12,800 ($12,600)
夫婦個別申告 $6,300 ($6,300)
特定世帯主 $9,300 ($9,250)
人的控除・扶養控除――納税者本人、配偶者、扶養家族各人に認められる一定金額の控除。
一人分の控除 $4,050 ($4,000)
永住権放棄者の税務――永住権放棄によって該当出国者とみなされた場合に課せられる出国税。
過去5年間の平均確定税額 $161,000 ($160,000)
時価評価課税の基礎控除額 $693,000 ($690,000)
海外役務所得控除――海外在住の米国市民・永住権保持者に認められる給与等所得の控除。
年間非課税枠 $101,300 ($100,800)
非課税贈与額――1年間に認められる無税贈与額。
一般無税贈与額 $14,000 ($14,000)
外国籍配偶者贈与額 $148,000 ($147,000)
生涯非課税贈与額 $5,450,000 ($5,430,000)
ソーシャルセキュリティー税――課税対象上限給与額。
課税対象上限給与額 $118,500 ($118,500)
(558)
キャピタル・ゲイン(譲渡益)とキャピタル・ロス(譲渡損)
- At November 09, 2015
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株やミューチュアル・ファンド、債券、土地、建物などの資産を売却した場合、取得費よりも高い金額で売却すると譲渡益(キャピタル・ゲイン)が生じ、取得費よりも低い金額で売却すると譲渡損(キャピタル・ロス)が生じます。連邦税法上、購入してから売却するまでの保有期間が1年超のものを長期キャピタル・ゲインと呼び、最高20%の連邦優遇税率が適用されます。2015年現在実際には3.8%の特別投資税が加えられて長期キャピタル・ゲイン税率は最高23.8%になります。保有期間が1年以下のものを短期キャピタル・ゲインと呼び、最高39.6%の通常の連邦所得税率が適用されます。
キャピタル・ロスは、キャピタル・ゲインと相殺します。相殺後に長期キャピタル・ゲインが残った場合、上記の長期キャピタル・ゲイン税率を適用して税金を計算します。相殺後に短期キャピタル・ゲインが残っていれば、他のすべての通常所得と合算した金額に通常の所得税率が適用されます。キャピタル・ゲインよりもキャピタル・ロスの方が多いため、相殺後にまだロスが残っている場合には、他の通常所得との限定的な相殺ができます。ただし、1年間に最高3000ドル(夫婦個別申告は1500ドル)が相殺控除の限度額となっています。 相殺控除後、まだなおキャピタル・ロスが残った場合は、翌年に繰り延べられ、後続年度のキャピタル・ゲインや通常所得との相殺控除が可能です。繰り延べ年数は、キャピタル・ロスが相殺控除によって減額していって無くなるまで無期限です。 (552)
州をまたがる在宅勤務者(テレコミューター)の税金
- At October 12, 2015
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従業員が会社に出勤せず、自宅にいながらにしてインターネットやスカイプで会社と連絡を取り合い、出勤従業員と同等の仕事を行う在宅勤務者のことをテレコミューターと呼びます。雇用主と従業員の双方にとって便利で重宝する勤務形態です。テレコミューターが居住する州と会社の所在州が同じである場合は、給与の源泉と州所得税の課税が同一州で行われるため税金の問題は生じません。州が異なる場合、法人税と個人所得税の問題が生じます。テレコミューターの他州における物理的存在は、会社が事業遂行のための拠点を他州内に有していることとなり、州法人税の申告・納税の問題が発生します。
州を越えるテレコミューターの動機が、会社の必要性からではなく本人の便宜のためである場合は、NY、NJ、ペンシルバニア、デラウエア、ネブラスカの各州の規定(2015年現在)の適用により、個人所得税の課税の問題が発生します。例えば、NYにある会社のために在宅勤務を行ったマサチューセッツ州居住者は、本人がNYの会社に毎日出勤して役務の提供を行って給与を得たことと同等と見なされます。すなわち、本人の便宜によるテレコミューターは、会社の所在州であるNY州の個人所得税の申告・納税を必要とします。マサチューセッツ州税上、他州税額控除の仕組みによって二重課税の回避が達成されます。在宅勤務の動機が会社側の便宜による場合は、NY州税の対象とはならず、役務の提供地であるマサチューセッツ州だけでの課税となります。(348)