日本在住の永住権保持者の税務
- At March 05, 2018
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永住権保持者が永住権を放棄せずに日本に住んでいる場合、日本の居住者として日本で全世界所得に対して税金が課せられると同時に、米国税法上、米国居住者として米国での所得税申告を行う義務があります。その際、同一所得に対して二つの国から徴税されて二重課税を被る可能性が生じます。二重課税の救済措置として定められたのが、「海外役務所得控除」と「外国税額控除」の規定です。海外に居住する米国国籍者に適用される米国規定が、海外に住む永住権保持者にも適用されるのです。
「海外役務所得控除」は、海外で得た給与や自営業事業所得などの役務所得について一定額を非課税所得として扱い、その金額を所得から削除することによって税金を軽減する制度です。一定金額とは、2017年は10万2100ドル、2018年は10万4100ドルであり、2019年以降もインフレ調整により毎年増額予定です。この所得控除の適用を受けるためには、外国の居住権取得後1暦年以上経過していること(居住条件)、あるいは、外国での実際の滞在日数が12カ月のうち330日以上であったこと(実際滞在条件)のいずれかの条件を満たす必要があります。フォーム2555参照。「外国税額控除」は、すでに外国で課税された所得に再度計算される連邦税を税額控除の形で、税額から差し引いて課税免除する方式です。「海外役務所得控除」の枠外に適用される控除です。(662)
永住権保持者はたえず居住者
- At February 27, 2018
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税法上、グリーンカード(永住権)保持者は米国市民と同等の扱いを受けます。通常、アメリカに滞在する外国人は、「実質的滞在条件」の判定基準によって年間の滞在日数が183日以上であれば居住者、183日未満であれば非居住者となります。永住権保持者は、この判定基準の適用外と定められていて、アメリカ滞在日数にかかわりなく、たえず居住者とされます。
たとえば日本に帰国して一年中アメリカ国外にいたとしても、永住権の放棄をしない限り、米国所得税法上の居住者として扱われます。つまり、いったん永住権を取得すると、その後はアメリカ国内、国外のどこに住んでいても、年間の全世界所得をアメリカにおいて申告する義務が生じるということです。日本へ帰国後、永住権保持者の収入は日本だけであり、アメリカでは収入がないため、連邦税の申告はしなくてもいいと考えるのは正しくありません。
既に日本で課税された所得を再びアメリカでも申告する場合、必ず二重課税が発生するとは限りません。それは海外在住者に与えられる二重課税防止措置である海外役務所得控除の作用によるためです。 (661)
ソーシャル・セキュリティー社会保障税
- At June 19, 2017
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米国で働いて給与や自営業報酬を受け取る人は、連邦社会保障制度のソーシャル・セキュリティー(SS)税とメディケア税を納めています。この二つの税金を社会保障税と呼びます。社会保障税を納めてきた人は、将来引退後SS手当てを受け取ることができます。
給与所得者は、給与が支給される度に連邦所得税と州所得税のほかに、社会保障税が給与から源泉徴収されます。会社は、従業員から源泉徴収した社会保障税と同額を雇用主負担分として加え、その合計額をIRS(内国歳入庁)宛に納付します。給与所得と源泉徴収税は、会社が年末に発行するフォームW-2でその内訳を知ることができます。自営業者は、自営業税と呼ばれる社会保障税を、連邦・州所得税と共に予定納税の形で、全額自分で負担してIRSへ払い込みます。
SS税の税率は、従業員6.2%、雇用主6.2%、合計12.4%です。メディケア税の税率は、従業員1.45%、雇用主1.45%、合計2.9%です。自営業者は、SS税12.4%、メディケア税2.9%で計算した社会保障税の全額を自分で負担します。SS税の年間課税対象税がインフレ調整によって毎年定められ、2016年11万8500ドル、2017年12万7200です。メディケア税については上限額は定められず、給与の全額が課税対象となります。(628)
雇用の分類と独立請負人
- At June 12, 2017
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雇用の分類には、報酬から源泉徴収税差し引き後の手取金額の支給を受け取る従業員(Employee)と、税金を差し引かれることなく報酬の全額の支給を受け取る独立請負人(Independent Contractor)があります。会社はフォーム1099-MISCを発行するだけで、源泉徴収や給与関係税の負担を回避し、雇用主の経費節減につながる独立請負人を選ぶ傾向にあります。しかし、従業員と独立請負人の分類は、雇用主と被用者との間の関係によって判断されるのであって、自由に選択できるわけではありません。この点に着目したIRS は、法人税の税務調査の際、独立請負人の分類や報酬の支払いについて調べ、従業員とみなして追徴税や延滞税を要求してくることがあるため要注意です。
IRS の規定によると、個人の行動に関して会社の束縛度が高く、管理下に置いている場合、従業員と判断されます。具体的には、会社が勤務時間や雇用の場所を指定すること、業務遂行の順序や方法を指示すること、使用する道具や機材を提供すること、特定の作業方法についての研修を施すことなどがあげられます。一方、個人が独自の業務手順や方法で仕事をする場合や、個人の自由裁量に委ねられている場合は、独立請負人とみなされます。独立請負人は、業務遂行上の必要経費の支出が自由であり、機材や道具、施設を投資所有しています。業務提供を複数の関与先に行うこともできます。雇用保険、退職年金、福利厚生制度の有無も判断基準となります。(627)
ギャンブル所得
- At June 12, 2017
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宝くじ、ラッフル、競馬、ルーレット、スロットマシーン、トランプ、麻雀などの賭けに当たって取得した「ギャンブル所得」は、所得税法上、課税対象となり、確定申告をしなければなりません。フォーム1040の「その他所得」の欄で報告します。給与、利子、配当などの他の所得と合算されて、通常の連邦所得税率(10%から39.6%までの7段階の累進税率)、および、居住している州の税率が適用となります。
所得に対応する「ギャンブル損失」は控除が認められ、項目別控除スケジュールAの「その他の控除」の(調整総所得の2%の「足切り制限」対象とはならない)欄で報告します。損失として控除が認められるのは、所得の金額までであり、宝くじのはずれ券、ラッフル購入代金、競馬の負け券など、賭けごとを行う際に費やした賭け金を含む直接経費で、同一年度内のあらゆる支出の合計額です。「ギャンブル損失」は項目別控除方式を選択した場合にのみ控除が認められ、概算額控除方式を採用した場合は控除できません。損失が所得よりも多いため控除が認められなかった金額は、翌年に繰り越されず控除の権利を失います。
賭け金(元金)の支払いを必要としない懸賞の申込みを行い、抽選などによって当選して賞金を獲得した場合、賞金は課税対象になりますが、控除は一切認められません。福引き、ドア・プライズ、商品購入義務のないくじ引きなどに参加して賞金を手に入れた場合も課税対象となり、元金の支出がないため控除は認められません。(626)
自宅内事務所の控除
- At June 12, 2017
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自宅の一部を仕事に使っている場合、自宅内事務所の費用について所得からの控除が認められます。自営業者は、事業所得算出上の必要経費として、また、給与所得者は、勤務活動上の必要経費としての取扱いです。自宅内事務所の経費として、固定資産税や住宅ローン支払利子、水道光熱費、火災保険料、修繕費、減価償却費、維持管理費、賃借料(貸家住まいの場合)などが含まれます。経費合計額を、自宅内事務所の面積が自宅総面積(台所、洗面所、押入れ等を除く)に占める割合で按分配賦した金額が控除額です。
自宅内事務所の経費は、フォーム8829にその詳細を記入して申告します。控除が認められるための条件として、①占有的・恒常的使用、および、②雇用主の便宜があります(IRC(内国歳入法)第280A条)。「占有的使用」とは、住居の一定空間を事業用に占有使用していることを言います。事業用と個人生活用に併用している場合は、占有使用ではないため否認されます。「恒常的使用」とは、住居の一定空間を事業用に常時使用していることを言います。偶発的・臨時的な使用だけの場合は、恒常的使用ではないため否認されます。「雇用主の便宜」とは、従業員の場合にのみ適用となり、自営業には適用されない条件です。自宅使用が雇用主の便宜上役立つため、雇用主の要請に基づいて自宅を仕事に使用する場合に控除が認められます。単に自宅使用が勤務遂行上便利で役立つという理由だけでは、「雇用主の便宜」が欠けているため
控除は認められません。(625)
勤務関連経費の控除
- At June 12, 2017
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給与所得者が勤務活動の一環として会社のために支出した経費は、会社からの返済額を超過した金額がその他の項目別控除として所得控除が認められます。ただし、経費の合計額が、調整総所得の2%を超えた部分が実際に控除できる金額です。フォーム2106に項目と金額を記入し、フォーム1040に添付提出します。
勤務関連経費の代表例は以下の通りです。出張旅費、贈答品費、接待費、交通費、組合費、職業団体会員費、キャルキュレーター、コンピューター、携帯電話、文房具、消耗品費、専門雑誌・職業新聞購読料、勤務関連教育費、自宅内事務所経費。
調整総所得の2%を超える部分について控除が認められる費用には、勤務関連経費のほかに、投資関連経費その他があります。代表例は、投資顧問料、投資管理手数料、投資弁護士費用、投資相談料、税務相談料、セーフディポジット・ボックス、税務申告書作成手数料、税務調査立合手数料。
経費の領収書だけでなく、勤務活動や投資活動と直接的な関係を示す根拠の記録の保管を必要とします。たとえば、接待費を控除するには、まず納税者の直接・間接の仕事に関係する顧客の接待であることを示し、接待の目的、接待された人の氏名とタイトル、日時、場所、領収書などの記録保管義務を果たしていなければなりません。(624)
災害損失の証拠
- At May 15, 2017
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災害および盗難の損失は突然の破壊・窃盗の結果でなければならないため、忘れ物、落し物は災害や盗難とは見なされず控除できません。大統領によって災害地域(Disaster Area)の指定が宣言されると、発生年度の前年に損失控除を申告して、還付を受けることができます。
災害盗難損失はフォーム4684に明細を記入して、申告書に添付して提出します。記入事項は、財産の種類、取得日、取得費、保険還付額、災害前の時価、災害後の時価などです。損失の評価額は、財産を失った場合は、取得費または時価のいずれか低い方の金額を採り、自動車事故や嵐による家屋損壊など、修繕を必要とする損害を被った場合は、修繕費を採ります。
損失の証拠書類は申告書に添付提出せず、将来税務当局からの提出要求に備えて手元に保管しておきます。災害を被る前の状況を示す写真、損失状況を示す写真、災害の報道記事、警察署への被害届、消防署の報告書、購入時の領収書、保険会社へのレポート、修繕費の領収書、鑑定士、建築家などの専門家の鑑定書が証拠書類の例です。(623)
連邦修正の州への報告
- At April 04, 2017
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連邦税の修正申告を行った場合や、所得の申告漏れに関するIRS通知を受け入れて追加納税を支払った場合、IRS調査によって収入や経費控除の金額に変更が生じた場合は、一定期限内に州の税務当局に対して連邦修正の報告書を提出して州税の追加納付をする義務があります。
連邦修正の州税務当局への報告期限は、修正の最終決定日以降30日ないし1年であり、次の通り州によって異なります。期限内に州の税務当局に報告書が提出されない場合、例えば連邦修正の最終決定日から90日以内のニューヨーク州への報告書提出義務を怠った場合、遅延申告ペナルティーと遅延納付ペナルティーが課せられます。
30日―コロラド州、ミネソタ州、ペンシルバニア州
60日―ルイジアナ州、オハイオ州、バーモント
90日―コネチカット州、ハワイ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州
120日―イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州
180日―ジョージア州、カンザス州、サウスカロライナ州
6ヵ月―カリフォルニア州
1年―マサチューセッツ州、オクラホマ州、バージニア州
連邦修正の内容が所得の減少または控除の増加であり、その修正を反映すると州税の還付となる場合、州からの還付が認められるためには、連邦税の還付金を受け取った証拠を提出しなければなりません。
修正申告によって支払う州税は連邦税の計算上控除が認められ、還付される州税は連邦税上課税対象となります。(618)
違法滞在者の税務
- At March 29, 2017
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入国後米国内に滞在期限を超えて違法滞在している外国人が働いて得る所得、すなわち違法就労所得の課税について検討します。
税法上、就労所得を合法と違法に区分けすることはなされていません。IRSはすべての所得を報告して税金を納めることを想定しています。所得が雇用主の簿外取引の支払いであるためフォームW-2やフォーム1099などの調書が発行されなくても、調書が正しく発行されたならば記載される金額を申告書に報告する義務があります。合法時に取得したソーシャルセキュリティー番号があれば、その番号を使います。番号を持っていない場合は、個人納税者番号(ITIN)を申請取得して使います。その場合は、社会保障制度への加入は許されず、ソーシャルセキュリティー税とメディケア税の支払いはできません。
違法就労者は、税務申告書上の報告内容が手がかりとなって移民局による手入れにつながるのではないかと懸念するでしょう。しかし、連邦税法上、納税者が税務申告書で報告した情報を、刑法犯罪に関与している場合を除いて、国土安全保障省(移民局)を含む政府の他機関へIRSが提供することは禁じられています(内国歳入法7213条)。従って犯罪に手を染めていないのであれば、税務申告書から違法滞在者が摘発されたり強制送還されたりすることはありません。IRSにとっては、すべての所得にかかる税金を徴収することの方が重要課題だからです。グリーンカード申請者は、違法年度分を含む過去の年度の確定申告書の提出を求められるため、留意が必要です。(617)