親からの仕送りと贈与税
- At June 11, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
米国在住の永住権保持者。親から生活費と教育費の援助を受けています。この送金は贈与税の課税対象になるのではないかという疑問について検討します。親や祖父母から送られてきた送金のうち、通常生活費または教育費として必要と認められる金額については、日本、米国とも贈与税の課税対象にはなりません。
生活費とは、家賃、水道光熱費、食費、養育費、治療費などの通常の日常生活を営むのに必要な費用のことをいいます。教育費とは、子や孫の授業料、教材費、文具費、交通費などで、義務教育費に限らず、教育上通常必要と認められるものをいいます。援助を受けた者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲の財産を指します。生活費、教育費として確実に使用されていれば、特に金額上の制限はありません。
仕送りが生活費、教育費に充てられず、預貯金となっている場合、株式や住居の購入に充てられた場合のように、生活費、教育費に費やされた分については贈与税の課税対象となります。婚姻に当たって子が親から受けた金品、親が負担した子の結婚式および披露宴の費用なども、親の扶養義務の範囲内であれば贈与税の課税対象にはなりません。ただし、親から結婚祝いと称して、車や不動産、あるいは投資資金などまとまった大きな金額のものを送られたりすると、それは常識的な範囲を超えているとして、贈与税の問題が生じます。(674)
永住権保持者は居住者
- At May 25, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
税法上、グリーンカード(永住権)保持者は米国市民と同等の扱いを受けます。通常、アメリカに滞在する外国人は、「実質的滞在条件」の判定基準によって滞在日数が183日以上であれば居住者、183日未満であれば非居住者となります。永住権保持者は、この判定基準の適用外と定められていて、アメリカ滞在日数にかかわりなくたえず居住者とされます。グリーンカード保持者が必ず居住者になるのは、所得税法の決まりであり、遺産税法上はそれとは異なる既定の適用により、居住者または非居住者になります。
たとえば日本に帰国して一年中アメリカ国外にいたとしても、永住権の放棄をしない限り、米国税法上の居住者として扱われます。つまり、いったん永住権を取得すると、その後はアメリカ国内、国外のどこに住んでいても、年間の全世界所得をアメリカにおいて申告する義務が生じるということです。日本に帰国後、永住権保持者の収入は日本だけであり、アメリカでは収入がないため、連邦税の申告はしなくてもいいと考えるのは正しくありません。
既に日本で課税された所得を再びアメリカでも申告する場合、必ず二重課税が発生するとはで限りません。それは海外在住者に与えられる二重課税防止措置の作用によるためです。(671)
医療費控除
- At May 07, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
項目別控除の一つとして控除が認められる医療費として、納税者本人、配偶者および扶養家族のために支払った内科、外科、小児科、産婦人科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、歯科など、あらゆる種類の身体疾患の診療費、治療費、処方箋薬品費、および健康保険料を含みます。保険でカバーされた金額を除き、実際に自己負担の形で支出したものに限ります。入院費、手術費、看護費、救急車、レントゲン、血液などの検査料、医療関係交通費、眼鏡、コンタクトレンズ、義歯、松葉杖、車椅子、盲導犬、慢性疾患看護保険料を控除できます。
医療関連経費の合計額が調整総所得の7.5% (2019年以降10%)の「足切り制限」額を超えた金額が控除の対象となります。7.5% の「足切り制限」以下の場合、医療費控除は一切認められません。例えば、調整総所得6万ドル、医療費5000ドルの場合の足切り制限額は、4500ドル(6万ドx 7.5% = 4500ドル)であり、控除額は差額の500ドルとなります。
控除できないものは次の通りです。生命保険料、市販の風邪薬、鎮痛薬、ビタミン剤などの常備薬、美容のための整形手術、違法ドラッグ、違法手術費、妊婦服、ピアス代、美容ダイエット薬、健康食品、減量プログラム費用、ヘルスクラブ会員費。(669)
被災地指定損失控除
- At April 30, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
所得税の計算上、項目別控除の一つとして災害盗難損失控除が認められてきましたが、2018年以降、その内容が大きく変わります。2017年までは、自然災害、自動車事故、火災や、盗難などによる損失額が控除の対象となっていました。2018年以降控除の対象となる災害とは、暴風雨、ハリケーン、竜巻、地震、津波、洪水、火山噴火、大雪、地滑り、大火災、などの災害のうち、大統領によって被災地指定の宣言が発せられた場合に限られます。災害は突然で、予期不能な、常軌を逸した破壊力によって生じたものでなければなりません。このように、災害の内容が以前と全く異なる種類のものになりました。
損失金額は以前同様、「足切制限」が適用となります。すなわち、保険や政府による補填額を超える金額で、調整総所得の10%を超過した部分が控除できる金額です。足切制限以下の場合、損失控除は一切認められません。被災地指定宣言が発せられることは頻繁には生じないため、殆ど見かけることのない控除項目になると言えます。(668)
住宅減税効果の減少
- At April 23, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
持ち家があると「住宅減税」の作用によって税金上有利となると言われてきました。住宅所有者が支払う固定資産税と住宅ローン支払利子について、個人所得税の計算上、控除が認められるからです。住居関連の支出の控除が認められないアパート住まい・貸家住まいと比べると、持ち家があれば節税分だけ得をする仕組みのためでした。
トランプ大統領による税制改正は、住宅所有者にとってかなり厳しい条項が含まれています。まず、固定資産税控除の大幅削減です。旧規定では固定資産税は、納税者の居住用住宅、セカンド・レジデンス、別荘、海外にある住居などの分が制限なしに、合計額が項目別控除の対象となっていました。2018年からの新規定では、固定資産税に州個人所得税を加えた合計額のうち、上限額として1万ドルの控除を認めると定められました。次に、住宅ローン支払利子控除の制限です。新しい契約の住宅ローンの借入上限額が百万ドルから75万ドルへ減額となります。旧契約による住宅ローン支払利子は、既得権により超過部分に対応する支払利子であっても控除が認められます。ホーム・エクイティー・ローン支払利子は、住宅改築用借入を除き控除できなくなります。(668)
勤務関連経費控除の撤廃
- At April 16, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
給与所得者が勤務活動の一環として雇用主のために支出した経費で会社からの返済額を超過した金額がその他の項目別控除として認められてきました。当控除は、2018年以降全面的に廃止となります。
経費の合計額が、調整総所得の2%を超えた部分が実際に控除できる金額でした。勤務関連経費として次の経費が挙げられます。出張旅費、交通費、組合費、職業団体会員費、計算機、文房具、コンピューター、
専門雑誌、職業新聞購読料、勤務関係教育費、自宅内事務所経費。フォーム2106(Employee Business Expenses)に詳細金額を記入し、申告書フォーム1040に添付提出します。調整総所得の2%を超える部分
について控除が認められていた項目別控除には、勤務関連経費のほかに、投資関連経費その他控除として以下の費用があります。投資顧問料、投資弁護士費用、投資管理手数料、投資相談料、セーフ・ディポジット・ボックス、税務申告書作成手数料、税務相談料、税務調査立会手数料。また、2%足切制限の対象とならない控除として、ギャンブル損失、故人の課税対象所得に係る遺産税がありました。2017年まで認められていた上記控除は、すべて廃止となりました。(667)
人的控除の撤廃と扶養税額控除の拡大
- At April 09, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
従来人的控除・扶養控除は、納税者本人、配偶者、扶養家族各1人について一定金額(2017年は4050ドル)の所得控除が認められてきましたが、トランプ税制によって当制度は撤廃されました。扶養控除と並行して存在してきた扶養税額控除は、継続して適用となります。17歳未満の扶養家族1人につき1000ドルが認められていた扶養税額控除は、2018年以降2000ドルに増額となります。当税額控除が適用される扶養家族とは、親族・世帯員条件、扶養条件、総所得条件、市民・居住者条件などの条件を同時に満たした17歳未満(16歳以下)の子供のことです。
税額控除は2017年までは、調整総所得が夫婦合算申告では11万ドル、独身は7万5000ドルを超えると、段階的削減の対象となっていました。所得限度額は2018年以降、夫婦合算申告40万ドル、独身20万ドルに増額となります。このように所得制限が大幅に緩和され、より多くの納税者が扶養税額控除を受けられるようになります。一定条件を満たせば、2000ドルの税額控除のうち1400ドルが還付可能な金額となります。それは1400ドルの税金が戻ってくることを意味します。(666)
離婚手当の税制取扱いの変更
- At April 02, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
Alimony (離婚手当) は従前から、税金計算上支払者に所得控除が認められ、受取人は所得として申告して所得税を支払わなければなりませんでした。2019年1月1日以降に下された裁判所の裁定に基づく離婚手当、または、同日以降に成立した文書契約に基づく離婚手当は、支払者は支払金額の所得控除が認められず、受取人は所得として申告して税金を支払う必要がなくなります。2018年12月31日までに下された裁定・文書契約に基づく離婚手当は、2019年以降も従来通り控除と課税の税金上の取扱いを継続します。
離婚手当は、現物ではなく現金での支払いであること、子女養育費の支払ではないこと、二人が同一住居に住んでいないこと、受取人が再婚しない限り少なくとも6年間の支払いを行う契約であること、一方の死亡または受取人の再婚によって中止となる支払いであること、受取人のソーシャルセキュリティー番号を控除金額に付記すること、が挙げられます。また、受取人の再婚により支払者は控除ができなくなります。(665)
居住州と勤務州が異なる場合
- At March 19, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
居住している州と勤務している州が異なる場合、通常、居住州と勤務州の双方で所得税の申告を必要とします。それぞれの州において居住者・非居住者のどちらの身分形態で申告すべきかが問題になります。州の居住者・非居住者の定義は、連邦税法上の定義と異なります。連邦税法上、居住者となっても、州税法上、居住者になるとは限らないことにご注意ください。
勤務州には、非居住者の身分形態でその州源泉の収入(給与所得)を課税対象所得として報告し、計算した所得税を申告納税します。一方、居住州には、居住者の身分形態で連邦税法上報告した所得と同一の年間全所得を報告します。その際、勤務州で申告納税した税金について「他州税額控除」の形で控除を受けます。
他州税額控除は、勤務州の申告書上既に所得として報告して課税された税金によって、居住州の税金が相殺されて、二重課税の回避を達成するために設けられた州税計算上の仕組みです。連邦税法上、居住者の身分で全世界所得報告して申告納税する際、既に一度外国で課税された所得が含まれていると、外国税額控除の作用により二重課税の回避が認められます。他州税額控除は、この連邦税の外国税額控除の取り扱いに類似した規定です。(664)
永住権保持者の贈与税・遺産税上の取り扱い
- At March 12, 2018
- By oshimaintl
- In
- 0
永住権(グリーンカード)保持者は、所得税法上たえずResident Alien (居住外国人) として米国市民と同等の扱いを受けることは周知の通りです。永住権を保持していると自動的に米国居住者になるという決まりは、所得税の取り扱いについてだけ言えることであり、贈与税・遺産税の取り扱い上適用されないことはあまり知られていません。贈与税・遺産税法上、外国人の居住者・非居住者の判定には、Domicile (定住地) と呼ばれる概念が適用されます。 Domicile とは、本人がいずれは戻って来ると考えている故郷のような場所のことで、贈与税・遺産税法上、それが米国内にあれば「居住者」、米国外にあれば「非居住者」 と判定されます。本人の意思に基づくこの主観的な判定基準を適用すると、ビザで米国に滞在する全ての外国人は、Domicileが米国にないため非居住者となります。老後米国滞在を続けるか帰国するか定かでない永住権保持者も、非居住者になります。国際結婚をして子供は米国籍であり、死後本人は米国のお墓に入るつもりの永住権保持者は、居住者と判定されます。
米国市民に認められる連邦遺産税の基礎控除は1,120万ドル(2018年)です。米国を Domicile とする永住権保持者(居住外国人) にも 1,120万ドルの非課税枠の全額が認められます。非居住外国人は日米遺産税条約第4条の適用により、米国内遺産が全世界遺産に占める割合で計算した按分配賦額 (1,120万ドルの一部) を非課税にすることができます。(663)