違法就労所得の税金
- At February 04, 2019
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税法上、合法就労所得と違法就労所得には区別は付けられておらず、IRSはすべての所得を申告して税金を納めることを奨励しています。所得が雇用主の簿外取引の支払いであるためフォームW-2やフォーム1099などの調書が発行されなくても、調書が発行されたならば記載される金額を申告書に報告する義務があります。合法時に取得したソーシャルセキュリティー番号があれば、その番号を使います。番号を持っていない場合は、個人納税者番号(ITIN)を申請取得して使います。ITINで申告する場合は、社会保障制度への加入は許されず、ソーシャルセキュリティー税とメディケア税の支払いをする必要はありません。
違法就労者は、税務申告書上の報告内容が手がかりとなって移民局による手入れにつながるのではないかとの懸念を持つでしょう。しかし、連邦税法上、納税者が税務申告書で報告した情報を、刑法犯罪に関与している場合を除いて、国土安全保障省(移民局)を含む政府の他機関へIRSが提供することは禁じられています(内国歳入法7213条)。従って税務申告書から違法滞在者が摘発されたり強制送還されたりすることはありません。IRSにとっては、すべての所得にかかる税金を徴収することの方が重要課題だからです。(705)
2018年の控除方式の選択にはご注意ください
- At January 21, 2019
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納税者は、2種類の控除方式(概算額控除と項目別控除)のうち一方式を選択して税金の計算を行います。
概算額控除(Standard Deduction) は、標準控除、定額控除と翻訳されることもあります。具体的な経費項目をあげずに、一定概算額による控除が認められるという簡便方式です。2018年の控除額は、夫婦合算申告2万4000ドル、特定世帯主1万8000ドル、独身・夫婦個別申告1万2000ドルです。65歳以上の高齢者の場合、既婚者一人1300ドル、独身1600ドルの追加控除が認められます。概算額控除は、経費の証拠書類がなくても一定額の控除が取れるので、いたって便利です。しかし、この控除方式を選択できるのは、アメリカ市民または一年中アメリカに滞在していた居住外国人に限ります。非居住外国人や二重身分の外国人の場合は、概算額控除の採用は認められず、必ず項目別控除を適用しなければなりません。
項目別控除(Itemized Deductions)は、個別控除と呼ばれることもあります。個人消費生活に関わる経費の内、税法上認められているものを項目別に並べて、その合計額を控除する方式です。
トランプ税制の大幅な制限・削減により2018年の控除項目は2017年までと大きく異なることにご注意ください。(703)
項目別控除(Itemized Deductions)が節税になるとは限らない
- At January 15, 2019
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住宅所有者は、税金計算上貸家住まいと比べて、固定資産税と住宅ローン支払利子の減税効果のある控除が認められて優遇されてきました。ところがトランプ大統領の税制改正が制定され、2018年以降、諸税金控除による優遇措置に歯止めがかかることになりました。諸税金とは、州・市の所得税と固定資産税の合計額をいいますが、諸税金額に対して、1万ドル(既婚者個別申告は5000ドル)の上限額が設定されました。
納税者は、項目別控除あるいは概算額控除のうち、いずれか有利な控除方式を選択して税金を計算することができます。概算額控除を選択できるのは、米国市民である場合、または、一年中を通じて居住外国人であった場合に限ります。控除の制限が施されたことにより、大概の場合項目別控除の方が有利となるという従来の考え方は改められることになります。
(例)既婚者Aさんは、控除方式として概算額控除(2018年2万ドル)と項目別控除のどちらを選択したら有利となるか計算します。A さんは、固定資産税1万5000ドル、州・市所得税1万ドル、住宅ローン支払利子9000ドルを支出したとします。2017年までは、諸税金の合計額2万5000ドルと支払利子9000ドルの総合計3万4000ドルが項目別控除として認められていました。2018年以降は、諸税金控除の上限額が1万ドルに抑えられ、その額に住宅ローン支払利子9000ドルを加えた1万9000ドルが項目別控除額となります。Aさんは、控除方式として項目別控除(1万9000ドル)ではなく概算額控除(2万ドル)を選択することにより節税となり、有利となります。(702)
修正申告
- At December 17, 2018
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申告書を提出した後、計算の間違えや収入の申告漏れに気付いた場合は、修正申告書(フォーム1040X)に変更項目の詳細説明を記入し、IRS(内国歳入庁)に報告して追加税金と延滞利息を支払う義務があります。修正申告書には収入の申告漏ればかりでなく、経費控除、申告資格(Filing Status)などの変更も報告します。また、過払税金の還付請求にも使われます。
銀行や役務提供先などから収入の支払調書フォーム1099が発行されていたのにもかかわらず、申告を怠っていた場合、後日IRSから所得の申告漏れにより追徴税が発生したことを記述した通知書が送られてきます。通知書が正しければ、追徴税を支払います。通知書が間違いであれば、その説明や根拠の提出を求められます。
IRSの通知書は必要経費の控除を無視して収入だけで税金を計算します。例えば、株や債券、ミューチュアル・ファンドの売却のフォーム1099-Bをうっかり申告していなかった場合、IRS通知書は取得費を全く考慮せずに税金の売却価格だけで計算をするため、追徴税の金額は驚く程高額になります。この場合には、IRSへ取得費や必要経費の控除が認められる旨を、早急に文書で伝え、必要に応じて修正申告書を作成します。売却価格が取得費を超えている場合は、キャピタル・ゲインが発生し追加税金になりますが、売却価格が取得費よりも低い金額の場合には、キャピタル・ロスとなり税金が還付されます。(698)
減価償却
- At October 16, 2018
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会社や個人事業主が家具や機械類、乗用車、コンピューター、不動産などを購入して事業の用に供した場合、購入年度に取得費の全額を必要経費として一括費用計上するのではなく、年の経過によって固定資産の価値が経済的、物理的に減少する期間にわたって配分計算して費用計上することを減価償却(Depreciation)と呼びます。減価償却とは、資産の購入代金(取得費)を資産が使用できるであろう期間(耐用年数)にわたって配分し、経費(減価償却費)にしていく方法のことです。
米国では固定資産は、3年から40年までの9段階の資産に分類され、それぞれの「耐用年数」と、定額法あるいは定率法の「償却方法」を適用して減価償却を計算します。居住用賃貸不動産については、取得費のうち土地部分を除いて建物部分のコストを把握し、耐用年数は米国内資産27.5年、海外資産40年、償却方法は定額法を適用して計算します。減価償却の計算は、鉄筋、木造、新築、中古の区別なく一様に適用されます。鉄筋、木造、新築、中古など不動産の種類によって異なる耐用年数が適用される日本の規定とは大きく異なる点です。賃貸住宅用家具は5年、事務用家具は7年で、定率法を適用して償却します。減価償却の途中で不動産を譲渡した場合、売却価格から建物部分の未償却費用(残存価格)と土地部分、譲渡費用を差し引いた金額が譲渡所得(売却益)となります。 (691)
双方居住者と外国税額控除
- At October 10, 2018
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米国の永住権保持者が永住権を放棄せずに日本に住んでいる場合、所得税法上、日本の居住者であると同時に米国でも居住者となります。同一人物が二つの国で居住者に該当することを双方居住者(Dual Resident)と呼びます。日米両国とも、居住者は毎年全世界所得を報告して確定申告をする義務があります。日本に帰国後、永住権保持者の収入は日本だけであり、米国では収入がないため連邦税の申告はしなくてもいいと考えるのは正しくありません。
既に一方の国で課税された所得を再び他方の国で申告する際、必ず二重課税が発生するとは限りません。それは税法上、二重課税防止措置が海外在住者に与えられているためです。二重課税防止措置とは、「海外役務所得控除」と「外国税額控除」を指します。「海外役務所得控除」は一律10万4100ドル(2018年)を特別所得控除の形で所得から差し引いて課税免除とする規定です。フォーム2555に必要事項を記入して確定申告書フォーム1040に添付提出します。この控除の金額は、毎年インフレ調整されて増額します。
「外国税額控除」は一方の国で既に課税された所得を他方の国で再度報告することによって生じる税金を税額控除の形で合理的な枠の範囲内で課税免除にする規定です。双方の国の源泉所得に所得税が課せられた場合、それぞれの相手国で外国税額控除を適用することによる減税が可能となります。(690)
「日米租税条約」による免税所得と州税
- At October 01, 2018
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米国の所得税は連邦政府に加えて、州政府や一部の市政府や郡政府によっても課せられます。連邦税と同一の税制が州税や市税にも適用されるかというと、必ずしもそうではありません。例えば、居住者・非居住者の州税上の定義は、連邦税のそれとは異なります。日米租税条約の取り扱いも、連邦税と州税とでは大きく異なります。そのため、連邦税は税金が免除されるのに、州の所得税は支払いが生じる場合があります。
F、J、M、Qビザで大学に通う米国滞在者は、条約第19条の適用により教育または生計維持のために日本から受け取る給付や仕送りについて、米国での課税が免除されます。事業修習生は、ビザの種類に関係なく入国後1年以内に受け取る日本からの給付や報酬について、米国では免税となります(条約第19条)。教授や研究者は、教育機関における教育または研究のために受け取る報酬について、米国内での支払いも含めて米国入国から2年間、課税免除となります(条約第20条)。免税のため税金の支払いがない場合でも、免税の法的根拠と金額を開示する申告書の提出を必要とします。
租税条約の規定によって免税となるのは、原則として連邦税に限ります。日米租税条約は、アメリカ合衆国(連邦政府)と日本国との間で締結された国家間の取り決めであり、免税は州法には及ばず州税が課されることがあります。(689)
外国税額控除
- At August 20, 2018
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米国市民と米国居住者は、米国源泉および外国源泉の年間全所得を申告して納税する義務があるため、外国税額控除は同一所得に対して二つの国から二重に課税されることを防ぐ唯一の方法なのです。
外国税額控除が認められるためには、①外国税は米国の所得税と同等の税金であること、②控除枠を形成する十分な外国源泉所得があること、③税額控除の限度枠の計算書フォーム1116を確定申告書フォーム1040に添付提出すること、を必要とします。外国所得税の金額が300ドル以下(夫婦合算申告は600ドル以下)で、かつ外国所得税の種類が利子、配当などの投資所得だけの場合、控除限度枠の計算書フォーム1116を添付することなく外国税額控除が認められます。控除限度枠を超えたため否認されて税額控除が認められず未使用となった外国税は、他の年度に繰り延べられます。繰延年度は、繰り戻し1年、繰越し10年です。
外国税額控除は、連邦所得税の計算のための規定であり、ただ一州ノースカロライナ州を除き、州・市所得税の計算上は認められません。(683)
個人納税者番号 (ITIN)
- At August 13, 2018
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米国の社会保障制度の整理番号であるソーシャルセキュリティー(SS)番号は、米国国民一人ひとりに振り分けられていて、納税者番号としても機能しています。労働許可を伴うビザの発行を受けた外国人はSS番号の取得が可能ですが、労働許可のないビザの場合、SS番号の取得はできません。そのかわりに個人納税者番号(ITIN)を取得しなければなりません。
例えば、SS番号を持っていない非居住外国人が所有する米国内住居を、人に貸して賃貸収入を得ている場合、アメリカの所得税申告書の提出を必要としますが、ITIN番号なしに申告書の提出はできません。外国からの直接投資でアメリカから所得を受け取る場合や、労働許可なしに所得税申告の必要がある場合などにも、やはりITIN番号を取得しなければなりません。
ITIN申請書フォームW-7は、SSオフィスではなくIRS(内国歳入庁)で申請します。SS番号は身分証明に役立ちますが、ITIN番号は決して身分証明の代用にはなりません。税金申告目的を具体的に示すことができなければITIN番号の申請はできません。ITIN番号申請の際、税金申告書、投資資産の所有権を示す書類、租税条約軽減税率の対象所得を示す書類などの提出が義務付けられています。(682)
ソーシャル・セキュリティー社会保障税
- At July 02, 2018
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米国で働いて給与や自営業報酬を受け取る人は、連邦社会保障制度のソーシャル・セキュリティー(SS)税とメディケア税を納めています。この二つの税金を社会保障税と呼びます。社会保障税を納めてきた人は、将来引退後SS手当てを受け取ることができます。
給与所得者は、給与が支給される度に連邦所得税と州所得税のほかに、社会保障税が給与から源泉徴収されます。会社は、従業員から源泉徴収した社会保障税と同額を雇用主負担分として加え、その合計額をIRS(内国歳入庁)宛に納付します。給与所得と源泉徴収税は、会社が年末に発行するフォームW-2でその内訳を知ることができます。自営業者は、自営業税と呼ばれる社会保障税を、連邦・州所得税と共に予定納税の形で、全額自分で負担してIRSへ払い込みます。
SS税の税率は、従業員6.2%、雇用主6.2%、合計12.4%です。メディケア税の税率は、従業員1.45%、雇用主1.45%、合計2.9%です。自営業者は、SS税12.4%、メディケア税2.9%で計算した社会保障税の全額を自分で負担します。SS税の年間課税対象税がインフレ調整によって毎年定められ、2017年12万7200ドル、2018年12万8400です。メディケア税については上限額は定められず、給与の全額が課税対象となります。(676)