満期保険金と保険年金の課税
- At June 17, 2019
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米国滞在中に米国の貯蓄型の生命保険と個人保険年金に加入して保険料を支払っていた日本人が、日本帰国後もそれらの保険に加入し続け、満期を迎えました。満期保険金と保険年金の日米での税金上の取り扱いについて検討します。
米国の保険会社から生命保険の満期保険金や中途解約金を非居住外国人(日本の居住者)へ支払う場合、30%の源泉徴収税(所得税)の対象となります。保険会社は源泉徴収税をIRS(内国歳入庁)へ納付し、差額の70%分を日本の受取人へ送金します。米国で差し引かれた源泉徴収税は、日本の所得税の計算上、外国税額控除が認められます。生命保険会社の保険年金は、終身または特定期間にわたって定期的に所定の金額が支払われる給付のことを指します。保険年金は、日米租税条約第17条の居住地国課税の原則に基づき、支払地である米国では非課税、居住地国である日本で課税対象となります。
日本では、満期保険金や中途解約金は、所得税または贈与税の対象となります。保険料の負担者と保険金の受取人が同一の場合、保険金は一時所得として所得税・住民税が課税され、確定申告を必要とします。受取額から払い込んできた保険料を差し引き、更に50万円を差し引いた残りの金額の1/2が課税対象額です。負担者と受取人が異なる場合は、所得税ではなく贈与税が課せられます。受け取った保険金から基礎控除の110万円を差し引いた金額に適用税率を掛け合わせて贈与税を算出します。保険年金は、雑所得として所得税と住民税の対象となります。(722)
生命保険金・死亡給付金――日本での課税
- At June 17, 2019
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生命保険金・死亡給付金の日本での課税は、保険料掛け金を誰が負担していたか、保険金の受取人が誰であるかによって、相続税、所得税、あるいは贈与税のいずれかの税金の対象となります。
相続税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)であった場合、相続人が受け取る保険金は相続財産に含まれ、他の相続財産と併せて相続税(10~55%)が課せられます。その際、法定相続人一人当たり500万円の特別控除が認められます。例えば、妻と子三人が遺された場合、保険金のうち2000万円までが非課税扱いとなります。雇用主が保険料を負担していた場合、被保険者(被相続人)が負担したことと見なされ、受取保険金は相続財産となります。
所得税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)ではなく、保険金の受取人(妻)である場合、一時所得として受取人に所得税と住民税が課せられます。一時所得を計算する上では、受取保険金の半額部分だけが課税対象になるため、相続税と比べて有利となります。保険料の一部を被保険者(夫)が負担し、残りの部分を保険金受取人(妻)が負担していた場合は、保険料の負担比率で按分した金額がそれぞれ相続財産および一時所得となります。
贈与税―被保険者が夫、保険料負担者が妻、保険金受取人が子の場合のように、保険料負担者が被保険者(夫)および受取人(子)以外のときは、保険料負担者(妻)から受取人(子)に対して、保険金の贈与があったこととして、受取人(子)に贈与税(10~55%)が課せられます。(721)
生命保険金・死亡給付金――米国での課税
- At June 03, 2019
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生命保険金・死亡給付金は、死亡者が非居住外国人である場合と米国籍・居住外国人である場合とで米国での税金上の取り扱いが異なります。
非居住外国人
非居住外国人の死亡により、保険会社から支払われる生命保険金・死亡給付金は、連邦所得税や遺産税、贈与税の課税対象になることなく、その全額を受け取ることができます。
米国籍・居住外国人
米国籍者あるいは居住外国人の死亡に伴って支払われる生命保険金・死亡給付金は、連邦所得税の課税対象にはなりませんが、保険契約によっては連邦遺産税(Federal Estate Tax)の対象になる場合とならない場合とがあります。生命保険金・死亡給付金が遺産税の課税対象となるかならないかは、死亡した保険加入者 (被保険者、例えば夫)が保険契約証書上、保険の所有者としての権利を有していたかどうかによります。保険の所有者としての権利とは、保険契約の解約、保険金の受取人の変更、保険証書の譲渡、保険に基づく借入れの権利などに関する決定権を持っていることを指します。税金を回避するには被保険者に一切の権利がない生命保険の契約を締結することが必要です。既に契約している生命保険証書がある場合は、所有者としての権利や決定権をすべて相続人(妻)へ譲渡することにより、生命保険金・死亡給付金の支払いについて連邦遺産税がかからないようにすることができます。ただし、死亡時から3年以上前に権利の譲渡が完了していなければなりません。(720)
日本からの贈与 日米贈与税
- At May 06, 2019
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日本に住む親から米国に住む子への贈与は、日本と米国のそれぞれの国で贈与税の対象となるかどうかを検討しなければなりません。その際、贈与者と受贈者の国籍や居住者・非居住者の別、財産の所在国、財産の種類などが課税・非課税の決め手となります。
日本国籍を保持する日本居住者から受け取る贈与は、受贈者の居住国が外国(米国)であっても、滞在年数が何年であっても、また財産の種類が何であっても、日本の贈与税の課税対象となります。贈与税は暦年課税の無税贈与枠である基礎控除額(150万円)を超える金額に、10%~55%の8段階の税率を掛け合わせて計算します。
米国の贈与税の納税義務者は受贈者(贈与を受けた人)ではなく贈与者(贈与を贈った人)であり、日本とは逆になっています。日本人(非居住外国人)からの贈与が米国の贈与税の対象になるかどうかは、贈与された財産の所在国が米国であったかどうか、財産の種類が有形資産であったか無形資産であったか、によります。まず、贈与税が課せられるのは、財産の所在国が米国であった場合だけであり、日本など米国外であった場合は、納税義務者(贈与者)である日本在住の親は課税対象から外されて、米国贈与税は課税されません。米国国内財産の移転であっても、財産の種類が有形資産(不動産、現金、自動車)であれば課税対象となり、無形資産(株式、債券、有価証券)であれば非課税です。(716)
ソーシャル・セキュリティー社会保障税
- At April 22, 2019
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米国で働いて給与や自営業報酬を受け取る人は、連邦社会保障制度のソーシャル・セキュリティー(SS)税とメディケア税を納めています。この二つの税金を社会保障税と呼びます。社会保障税を納めてきた人は、将来引退後SS手当てを受け取ることができます。
給与所得者は、給与が支給される度に連邦所得税と州所得税のほかに、社会保障税が給与から源泉徴収されます。会社は、従業員から源泉徴収した社会保障税と同額を雇用主負担分として加え、その合計額をIRS(内国歳入庁)宛に納付します。給与所得と源泉徴収税は、会社が年末に発行するフォームW-2でその内訳を知ることができます。自営業者は、自営業税と呼ばれる社会保障税を、連邦・州所得税と共に予定納税の形で、全額自分で負担してIRSへ払い込みます。
SS税の税率は、従業員6.2%、雇用主6.2%、合計12.4%です。メディケア税の税率は、従業員1.45%、雇用主1.45%、合計2.9%です。自営業者は、SS税12.4%、メディケア税2.9%で計算した社会保障税の全額を自分で負担します。SS税の年間課税対象最高税がインフレ調整によって毎年定められ、2018年12万8400ドル、2019年13万2900ドルです。メディケア税については上限額は定められず、給与の全額が課税対象となります。給与、報酬が20万ドル超の金額に対して追加メディケア税として0.9%の税金が課せられます。(714)
非課税住居売却益と使用目的条件
- At April 08, 2019
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主たる住居の売却益(譲渡益)について、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルの非課税措置の恩恵を受けるためには、①2年間の所有条件、②2年間の居住条件、③使用目的条件を同時に満たす必要があります。①所有条件は納税者が住居の所有権を有すること、②居住条件は主たる住居として納税者が実際に日常的にその家に住んでいること、③使用目的条件は、主たる住居としての適格使用をいいます。非適格使用があった場合は、25万ドル・50万ドルの非課税額は制限されて満額認められず課税されます。非適格使用とは、主たる住居使用以外の休暇や賃貸目的使用のことを指します。
(例)独身Aさんは、2017年1月1日に30万ドルで住居を購入して、賃貸(非適格使用)のために3年間使用しました。2020年1月1日、その家に移り住み「主たる住居」(適格使用)として2年間使用しました。2022年1月1日、その住居を60万ドルで売却し、30万ドルの譲渡益をを得ましたが、2年間の「所有条件」および「居住条件」を満たしてはいるものの、所有していた5年間のうち3年間は主たる住居以外の非適格使用であるため、譲渡益のうち18万ドル(60%)は課税対象の譲渡益となり、残りの12万ドル(40%)だけが非課税扱いとなります。 (712)
親からの仕送りと贈与税
- At March 27, 2019
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米国在住者が日本の親から生活費や教育費のための仕送りを受けた場合の課税について検討します。親子や兄弟姉妹、夫婦などの間で支払われる仕送りや送金を、生活費・教育費として受け取った場合は、日本、アメリカとも贈与 税の対象となりません。仕送りをする側が子、仕送りを受ける側が親の場合も課税されません。
生活費とは、家賃、水道光熱費、食費、養育費、治療費などの通常の日常生活を営むのに必要な費用のことをいいます。教育費とは、子や孫の学資、教材費、文具費、交通費などの義務教育費に限らず、教育上通常必要と認められるものをいいます。援助を受けた者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲の財産を指します。いくらが常識的な範囲かというのは、その家庭の生活水準や仕送りをする側、される側の生活状況によっても判断が変わってきます。
仕送りが生活費又は教育費に充てられず、預貯金となっている場合、株式や住居の購入に充てられた場合のように、生活費・教育費に充てられなかった部分については贈与税の課税対象となります。婚姻に当たって子が親から受けた金品、親が負担した子の結婚式および披露宴の費用なども、贈与税の課税対象にはなりません。社会通念上相当と認められる範囲内のものに限ります。(711)
予定納税の過少納付加算税
- At March 19, 2019
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所得税は、源泉徴収または予定納税によって年内に概算額を払い込んでおいて、年明けの確定申告時に過不足の金額を計算して税金の精算を行います。源泉徴収とは、毎月の給与支給のたびに給与から差し引かれた税金を雇用主が内国歳入庁(IRS)へ納める制度のことです。予定納税とは、給与以外の自営業事業所得や利子、配当、譲渡所得などにかかる税金を、納税者が年内に4分割して四半期ごとにIRSへ払い込む制度のことです。
源泉徴収や予定納税により前もって納められた金額が、確定税額(確定申告書で計算された税金額)と比べて1000ドル超不足していると、予定納税の過少納付加算税というペナルティーが課せられます。ただし1000ドル超の不足額があっても、年度内の源泉徴収および予定納税による納付額が確定税額の90%以上であれば、ペナルティーは生じません。年度終了前に確定税額を的確に予測するのは極めて困難である事実を考慮して、IRSは予定納税の安全圏規定(セーフハーバー・ルール)を定めています。すなわち、前年度の確定税額の100%(夫婦合算申告の調整総所得が15万ドル超は110%)以上を年内適時に納付してあれば、たとえ不足額が多額であったとしてもペナルティーを確実に回避できるという規定です。
なお、過少納付加算税ペナルティーの計算には、3か月ごとにIRSによって公表される延滞利息・還付金利息のための法定利率(2019年第1四半期は6%)が使われます。(710)
申告書の提出期限延長
- At March 11, 2019
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出張などのため期限日までに税金申告ができない場合、申請によって提出期限の延長が認められます。延長申請時の税金納付は次の3種類の方法から一つを選びます。①フォーム4868に必要事項を記入し、小切手を同封して4月15日までに郵送提出する(申請書に本人のサインは求められない)。②Direct Payまたはクレジットカード・デビットカードで追加税金払い込む。③パソコンを使ってe-file する(この方法は特定のソフトウエアを購入する必要がある)。申請によって6ヶ月間、10月15日まで提出期限が延長されます。
延長申請によって認められるのは申告書の提出期限の延長であって、税金納付の延長でありません。税金不足分は延長申請時に上記3種類の方法のうちの一つで支払わなければなりません。確定申告書の提出時に確定税額とそれまでの納付額とを比べて税金の精算をします。税金過払いのため還付金を受け取ることになる場合は問題ありませんが、納税不足のため追加納付になる場合は延滞利息と、ことによってはペナルティーが課されます。利率はIRSが3ヶ月ごとに公表するレートを適用します。2018年と2019年のIRS利率は年率4%です。税金不足分が確定申告額の10%を超えた場合には、延滞利息に加えて遅延納付ペナルティーが課されます。ペナルティーは税金滞納1ヵ月につき0・5%、ただし最高25%です。州税についても期限延長申請の必要がある場合があります。(709)
キャピタル・ロス(譲渡損)の繰延控除
- At February 18, 2019
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株やミューチュアル・ファンド、債券など投資目的で購入して保有していた資産を売却した場合、取得費よりも高い値段で売却した場合に譲渡益(キャピタル・ゲイン)が、取得費よりも低い値段で売却した場合に譲渡損(キャピタル・ロス)が発生します。購入してから売却するまでの保有期間が1年超の長期キャピタル・ゲインは最高20%の優遇税率が適用されます。保有期間が1年以下の短期キャピタル・ゲインは通常の所得税率が適用されます。キャピタル・ロスは控除が認められます。
キャピタル・ロスを控除する際、一定の順序を守らなければなりません。キャピタル・ロスは、キャピタル・ゲインと相殺します。相殺後に長期キャピタル・ゲインが残れば、前述の20%の優遇税率を適用して税金を計算します。相殺後に短期キャピタル・ゲインが残っていれば、その金額は他のすべての所得と合算して、通常の所得税率(10%~37%の累進税率)が適用されます。 キャピタル・ゲインよりキャピタル・ロスの方が多く、相殺後にロスが残った場合は、給与、利子、配当、事業所得などの通常所得と相殺できます。ただし、1年間に最高3000ドル(夫婦個別申告は1500ドル)が相殺控除の限度額となっています。 相殺控除後、まだキャピタル・ロスが残った場合は、翌年に繰り延べられ、キャピタル・ゲインや通常所得との相殺控除が可能です。繰り延べ年数は、キャピタル・ロスが相殺控除によって無くなるまで無期限です。 (706)