居住外国人の死 Death of Resident Alien

<居住外国人の死 Death of Resident Alien>

居住外国人(日本国籍)である夫が亡くなった場合の税金関係はどうなるのでしょうか。死亡というとすぐに思いつくのが相続税ですが、その前になすべきこととして所得税の申告があります。生前、毎年提出してきた連邦と州の所得税の最後の年度の申告書です。死亡年度は、夫婦合算申告(ジョイントリターン)の税率を適用して所得税の計算をすることが認められています。ただし生存配偶者が年末時点で再婚していないことが条件です。報告する所得は死亡配偶者分は1月1日から死亡日までの間の所得です。生存配偶者分は、1月1日から12月31日までの年間全所得です。申告書の上方の空白に、Deceased死亡者氏名と死亡日を書き込みます。申告書には生存配偶者が署名をして、死亡配偶者欄に“filing as surviving spouse”(生存配偶者による申告)と記入すると、一人分の署名だけで提出できます。あるいは死亡配偶者に代わって遺産管理人・執行人が署名することもできます。

死亡後死亡者の財産に加算される利子、配当、レントなどの収益は、個人所得税の対象とならず、遺産所得税申告書(Income Tax Return for Estates)フォーム1041で申告して納税します。税率は個人所得税と同じ累進税率です。遺産所得税申告書は、遺産が分配される年度まで、毎年提出します。遺された遺産の種類、所在国、金額によって、連邦遺産税、州遺産税・相続税、日本の相続税の申告を必要とします。(434)

適格福利通勤費 Transport Fringe

<適格福利通勤費 Transport Fringe>

自宅と勤務先の会社との間の往復に費やす通勤費は、米国税法上原則として従業員の必要経費として控除が認められず、会社から支給される通勤費は、通常、課税対象の所得としての取り扱いとなります。適格福利通勤費はその例外で、非課税支給が認められます。会社は従業員に対する給与の支給に加えて、各種の福利厚生制度を提供しています。税法上、適格福利厚生制度として認められているものの中に、公共通勤費(Transit Pass Benefit)と適格駐車施設費(Parking Benefit)があります。公共通勤費とは、地下鉄やバス、通勤用鉄道などの公共運賃を指し、2013 年現在1ヵ月245ドルまでが非課税の支給額となっています。適格駐車施設費とは勤務に不可欠な駐車場の費用を指し、1ヵ月245ドルまでが非課税の支給額です。同一従業員が通勤のために公共通勤費と適格駐車施設費の両方を利用する必要がある場合は、合計490ドルが非課税支給額となります。

非課税額は毎年IRSによって異なる金額が発表されます。2014年の金額は、当記事の執筆時点で未発表です。非課税額を超過した通勤費と駐車施設費は、給与と見なされてフォームW-2に含まれます。会社側には源泉徴収義務があり、従業員側には個人の課税対象所得として申告する義務があります。(460)

税金諸係数のインフレ調整ーInflation Adjustment to Tax Figures 2014

<税金諸係数のインフレ調整ーInflation Adjustment to Tax Figures 2014>

税金を計算する際に必要とする各種控除の基準額や限度額の2014年の金額がIRSによって発表されました。カッコ内は2013年の金額。

概算額控除――具体的な経費項目を挙げずに認められる一定概算額による簡便方式の控除。
独身- $6,200 ($6,100)
夫婦合算申告-$12,400 ($12,200)
夫婦個別申告-$6,200 ($6,100)
特定世帯主- $9,100 ($8,950)

人的控除・扶養控除――納税者本人、配偶者、扶養家族各人に認められる一定金額の控除。
一人分の控除-$3,950 ($3,900)

永住権放棄者の税務――永住権放棄によって該当出国者とみなされた場合に課せられる出国税。
過去5年間の平均確定税額-$157,000 ($155,000)
時価評価課税の基礎控除額-$680,000 ($668,000)

海外役務所得控除――海外在住の米国市民・永住権保持者に認められる給与等所得の控除。
年間非課税枠-$99,200 ($97,600)

非課税贈与額――1年間に認められる無税贈与額。
一般無税贈与額- $14,000 ($14,000)
外国籍配偶者贈与額- $145,000 ($143,000)
生涯非課税贈与額-$5,340,000 ($5,250,000)

ソーシャルセキュリティー税――課税対象上限給与額。
課税対象上限給与額- $115,500 ($113,700) (458)

特定世帯主:扶養家族がいる独身者の税率表 Head of Household

<特定世帯主:扶養家族がいる独身者の税率表 Head of Household>

扶養家族を養っている独身者は、独身用の税率表のかわりに特定世帯主(Head of Household)の税率表を使って計算すると、所得税が低く計算されて有利となります。例えば、課税所得を4万ドルと仮定して2013年の連邦所得税を計算すると、独身では5930ドルになるのに対して、特定世帯主では5363ドルと計算され、567ドルの節税となります。課税所得が高額になればなるほど、その差は大きくなります。

特定世帯主の申告資格を適用するための条件は、扶養家族の年間生活維持費の50%以上を納税者が負担して養っていること、1年のうち半年以上納税者と同居していることです。子供を連れて離婚した場合、配偶者の死後子供を抱えて再婚していない場合、未婚の母または父の場合などが特定世帯主に該当します。特定世帯主のための扶養家族とは、子供だけではなく、親、兄弟姉妹、甥姪なども含みます。親を扶養している場合、同居の必要はなく別の場所に住んでいてもかまいません。扶養家族は、米国国籍保持者あるいは米国居住者でなければなりません。

概算額控除(Standard Deduction)の金額(2013年)についても、独身6100ドルに対して特定世帯主8950ドルと、より有利な金額が設定されています。(457)

離婚扶助科(Almony)の税金 Taxation of Almony

<離婚扶助科(Almony)の税金 Taxation of Almony>

離婚の結果生じる税金問題について検討します。法律に基づいて正式に離婚し、その結果、慰謝料、子女養育費、離婚扶助料などを元配偶者に支払います。このうち、裁判所の命令または書面契約に基づく離婚扶助料(Alimony)の定期的な支払いだけは、支払者側の所得税計算上、所得調整控除が認められます。そして、受け取る側の配偶者は、離婚扶助料を課税対象の所得として報告して税金を支払う義務があります。

適格離婚扶助料と認められるためには、現物ではなく金銭での支払いであること、子女養育費(Child Support)の支払いではないこと、二人が同一住居に住んでいないこと、受取人の死亡によって中止となる支払いであること、受取人のソーシャル・セキュリティー番号を申告書の控除金額に付記することの諸条件を満たす必要があります。

子女養育費の支払いは、離婚扶助料とは逆に、受取人側は非課税であり、支払者側は控除できません。また、離婚扶助料以外の不動産、現金、その他の財産による離婚に伴う譲渡・分与も、支払者、受取人の双方にとって非課税であり、譲渡益、譲渡損失とも税金申告の対象にはなりません。 別れた配偶者の生活費を事実上50%以上サポートしていたとしても、扶養控除(Personal Exemption年2013年3900ドル)が認められることはありません。 (455)

収益の認識基準:現金主義と発生主義 Cash or Accrual

<収益の認識基準:現金主義と発生主義 Cash or Accrual>

課税所得を決定するにあたって、一定の収益の認識基準に従って計算を行なう必要があります。収益の認識基準には、現金主義(Cash basis)と発生主義(Accrual basis)の二通りの会計処理方法があります。現金主義は、個人納税者用の会計処理方法で、現金または現金等価物を実際に受け取った年度に収益を認識し、実際に現金を支払った年度に費用を認識します。発生主義は、個人事業や法人の課税所得の認識に用いられる会計処理方法で、金銭を受け取る権利が確定した時点で収益を認識し、支払うべき債務とその金額が決定した時点で費用を認識します。
自営業や法人の場合でも、過去3年間の平均総収入が500万ドル以下であれば現金主義を採用できます。平均総収入が500万ドルを超える場合は発生主義の採用が義務付けられます。販売活動に従事して棚卸資産の計上義務のある納税者は、仕入や売上などを発生主義で計上する義務があります。給与や利子、配当、項目別控除などの個人的活動には現金主義を採用し、事業活動には発生主義を採用することが認められます。また、複数の事業活動に従事している場合に、事業活動によって異なる会計処理方法を採用することも認められます。
役務提供年度と報酬受領年度が異なる場合、現金主義では、収益を認識する年度は実際に現金が支払われた年度(後の年度)となります。発生主義では、逆に役務が提供された年度(前の年度)となります。(437)

税金諸係数のインフレ調整ーInflation Adjustment to Tax Figures 2013

<税金諸係数のインフレ調整ーInflation Adjustment to Tax Figures 2013>

税金を計算する際に必要とする各種控除の基準額や限度額の2013年の金額がIRSによって発表されました。カッコ内は2012年の金額。
概算額控除――具体的な経費項目を挙げずに認められる一定概算額による簡便方式の控除。
独身-$ 6,100 ($5,950)
夫婦合算申告-$12,200 ($11,900)
夫婦個別申告-$6,100 ($5,950)
特定世帯主-$8,950 ($8,700)

人的控除・扶養控除――納税者本人、配偶者、扶養家族各人に認められる一定金額の控除。
一人分の控除-$3,900 ($3,800)

永住権放棄者の税務――永住権放棄によって該当出国者とみなされた場合に課せられる出国税。
過去5年間の平均確定税額-$155,000 ($151,000)
時価評価課税の基礎控除額-$668,000 ($651,000)

海外役務所得控除――海外在住の米国市民・永住権保持者に認められる給与等所得の控除。
年間非課税枠-$97,600 ($95,100)

非課税贈与額―1年間に認められる無税贈与額。
一般無税贈与額- $14,000 ($13,000)
外国籍配偶者贈与額-$143,000 ($139,000)

ソーシャルセキュリティー税――課税対象上限給与額。
課税対象上限給与額- $113,700 ($110,100) (422)

標準マイレッジ・レート Standard Mileage Rate

<標準マイレッジ・レート Standard Mileage Rate>

自分の車を会社の仕事または自営業の事業に使った場合、個人所得税の計算上、車の費用の控除が認められます。控除は「標準マイレッジ・レート」または「実額法」のいずれかの控除方法を適用して計算します。会社から車の費用の精算を受ける場合も、標準マイレッジ・レートか実額法が使われます。

標準マイレッジ・レートは、車の事業用の走行マイルに標準レートを掛け合わせた金額を控除する簡便法です。この方法を適用すると、ガソリン代、保険料、減価償却費など、車の維持に要した実費の記録を保存しておく必要がありません。初年度に標準マイレッジ・レートを選択すると、後の年度も同方法を継続適用できます。実額法を選択した場合は、後の年度に標準マイレッジ・レートに変更することは認められません。

2013年の1マイル毎の標準マイレッジ・レート(カッコ内は2012年のレート)は次の通りです。
ビジネス目的   56.5セント(55.5セント)
医療や転勤目的 24セント(23セント)
慈善目的 14セント(14セント)

実額法は、車のガソリン代、オイル代、保険料、修繕費、登録料、維持費、減価償却費など、実際に事業に使った金額を控除する方法です。車を事業だけに使用している場合は、全額控除の対象となりますが、一部を私用に使っている場合は、事業用マイル数が年間合計走行マイル数に占める割合で按分計算した金額が控除の対象となります。(420)

自宅内事務所の控除 Home Office Expenses

<自宅内事務所の控除 Home Office Expenses>

自宅の一部を仕事で使っている場合、項目別控除(スケジュールA)の一つとして、あるいは自営業事業所得(スケジュールC)の必要経費として、自宅内事務所の控除が認められます。フォーム8829にその詳細を記入して申告します。控除が認められるための条件として、①占有的・恒常的使用、および、②雇用主の便宜があります(IRC(内国歳入法)第280A条)。

① 占有的・恒常的使用
「占有的使用」とは、住居の一定空間を事業用に占有使用していることを言います。事業用と個人生活用に併用している場合は、占有使用ではないため否認されます。「恒常的使用」とは、住居の一定空間を事業用に常時使用していることを言います。偶発的・臨時的な使用だけの場合は、恒常的使用ではないため否認されます。

② 雇用主の便宜
「雇用主の便宜」は、従業員の場合にのみ適用となり、自営業には適用されない条件です。自宅使用が雇用主の便宜上役立つため、雇用主の要請に基づいて自宅を仕事に使用する場合に控除が認められます。単に自宅使用が勤務遂行上便利で役立つという理由だけでは、「雇用主の便宜」が欠けているため控除は認められません。

控除の対象となる自宅内事務所の経費として、固定資産税や住宅ローン支払利子、水道光熱費、火災保険料、修繕費、減価償却費、維持管理費、賃借料(貸家住まいの場合)などが含まれます。経費合計額を、自宅内事務所の面積が自宅総面積(台所、洗面所、押入れ等を除く)に占める割合で按分配賦した金額が控除額です。(418)

相続財産の取得費 Inherited Property Basis

<相続財産の取得費 Inherited Property Basis>

日本の親が土地や家屋を遺して亡くなりましたとします。米国の居住外国人が日本にある相続財産を売却する際、日米両国での税金申告が必要となります。不動産の売却益(譲渡所得)は、譲渡収入から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費は、日本と米国とで同一物件であるにもかかわらず、異なる金額が使われます。譲渡費用は、仲介手数料、印紙代など、売るために直接かかった費用をいい、日本と米国で同額を控除します。

日本の税法上、相続財産の取得費は、被相続人(亡くなった人)の歴史的取得費を相続人が引き継ぎます。何十年も前に購入したため取得費が不明の場合や、金額が極端に低くて譲渡収入の5%に満たない場合は、譲渡収入の5%相当額を不動産の取得費として計上することが認められます(概算取得費控除の特例)。日本に住所のない納税者は、住民税の対象外です。

米国の税法上、相続財産の取得費は、相続発生時(死亡時)の時価(マーケット・バリュー)を使用する決まりとなっています。ここが日米の方式で大きく異なる点です。日本では殆どの場合、譲渡益が計算されて税金が発生します。米国の申告書では、相続発生後それ程日数がたっていない不動産の売却は、相続時の時価と売却時の譲渡収入がほぼ同額のため圧迫された譲渡益となります。そのため税金が算出されないか、算出されたとしても多額にはなりません。日本で支払った税金は、米国で外国税額控除が認められます。(400)

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