日米社会保障協定

<日米社会保障協定>

アメリカに滞在する日本人駐在員は、2004年まで日本とアメリカ両国の社会保険料の二重払いを避けることができませんでした。当時の法律に従うと、米国に滞在して給与支給を受ける日本人は、アメリカの社会保障制度への強制加入と社会保障税の納付義務があったためです。同時に日本でも不在期間の厚生年金保険料を支払わなければ、老後の厚生年金が減額されて支給されます。公的年金はアメリカでは10年間、日本では25年間加入して掛け金を払わなければ受給権を取得できません。10年以上滞在しない限り、アメリカのソーシャルセキュリティー(SS)は掛け捨てになるわけです。

社会保険料の二重払いと掛け捨てを防ぐ「日米社会保障協定」が新たに締結されました。協定は2004年2月19日、日米両国によって調印され、2005年に発効しました。協定によると、原則として5年以下派遣予定である場合、アメリカに滞在する日本人駐在員のSS税およびメディケア税が免除されます。協定が有効となった際に受ける恩典、特に「ネット保証」の給与支給制度を採用している日系企業の場合は無視できません。また、両国の保険加入期間の相互通算措置も協定に盛り込まれています。すなわち、日米両国の年金制度への加入期間を通算して、合計年数が最低必要とされる期間以上であれば、両国の制度からそれぞれの加入期間に応じた年金が受けられることになりました。(18)

収入レベルによる年金削減

<収入レベルによる年金削減>

早期退職者の収入レベルが高い場合、年金手当の給付額が早期退職による削減に加えて、さらに削減されることがあります。収入レベルによる給付削減は早期受給者だけに適用されます。早期給付を受けず、満期受給年齢に達してから給付開始した人は、収入がどんなに多くても給付額が削減されることはありません。

早期受給者が、「一定額」以上の課税対象となる役務所得を稼得すると、超過額2ドルにつき1ドルの給付が削減されます。2013年の「一定額」は1万5120ドルです。「一定額」は毎年インフレ調整されるため変ります。役務所得とは、働いて得た給与、自由業事業所得などの勤労所得を指します。仕事以外の収入、例えば企業年金手当、保険年金手当、および利子、配当、キャピタル・ゲインなどの投資所得は、どんなに高額になってもかまいません。給付額に直接影響を与える収入のある人は、給付額の調整計算のため、SSオフィスに収入金額の変更を、その都度逐一報告する義務があります。(17)

早期退職手当

<早期退職手当>

アメリカで10年以上働いて税金を納めたソーシャルセキュリティー(SS) 受給資格者は、引退後SS年金手当を受け取ることができます。満期受給年齢は2002年までは65歳でしたが、2003年から毎年少しずつ延びて、2014年現在66歳です。1960年生まれ以降の退職年齢は67歳になります。早期受給を選択して、62歳から年金手当を受け取ることもできます。その場合は、満額給付ではなく削減された給付額が支給されます。

早期受給の給付削減率は満期受給年齢によって異なります。満期受給年齢が65歳であった1937年以前生まれの人が、62歳で早期に受給開始した場合の削減率は20%です。したがって、例えばこの人の満期給付額が月$1000 とすると、削減された給付額は月$800です。早期受給年齢と満期受給年齢との間隔が短ければ短いほど削減率も低くなり、給付額が増えます。早期給付を受けると、最初の削減給付額が生涯にわたって支払われます。満期受給年齢後に受給開始した場合は、生涯、増額給付を受けます。(16)

ソーシャルセキュリティー年金給付金額

<ソーシャルセキュリティー年金給付金額>

受給資格者に給付される年金手当の金額は、クレジット・ポイント数、合計納税額、加入年数などによって異なります。2014年現在一ヵ月最高2500ドルほどです。拠出金額が高く、クレジット・ポイント数(加入年数)が多いと給付額が多額になりますが、低所得者であった人への還元比率が高額所得者であった人に比べて高くなる傾向があります。配偶者も引退年齢に達している場合は、専業主婦であっても夫の給付額の50%までの手当給付を受けることが可能です。本人のクレジット・ポイント数に基づく金額または夫の給付金額の半額、いずれか多い方が給付金額です。

受給資格を満たした納税者は、たとえ日本に帰国して日本の居住者になっても、アメリカからソーシャルセキュリティー年金手当を受け取ることができます。有資格者は日本にあるアメリカ大使館で申請することができます。ソーシャルセキュリティー制度には、さらに障害者手当、遺族手当、メディケア医療手当、低所得者保護手当などがありますが、これらは米国国内用です。(15)

年金受給資格

<年金受給資格>

アメリカで働いて給与や事業所得を受け取ると、所得税のほかにソーシャルセキュリティー(SS) 税が課せられます。その際SSクレジットが加算されていきます。合計SSクレジットが40ポイント(通算10年)以上あると、退職後に老齢退職年金手当を受給する資格が得られます。2013年は四半期に最低1,160ドルの役務所得で1ポイント、年間最低4,640ドルで4ポイントのクレジットを獲得します。この金額は消費者物価指数に基づいて毎年インフレ調整が施されます。年金の満額支給年齢は66歳ですが、62歳から早期受給が可能です。その場合は減額された金額が支給されます。

40ポイントのSSクレジットは継続して獲得する必要はありません。例えば、日本へ帰国などのためアメリカでの役務所得が途絶えたとしても、獲得したポイントが保存され、その後再び米国に入国して働くと、過去に積み立てたポイントに新たに積み重ねられてポイントが加算されます。結果的に62歳に達した時点で21歳以降の累積クレジットが40ポイントあれば、老齢退職年金手当の受給資格を得られます。(14)

社会保障税

<社会保障税>

アメリカで働いて給与や自由業報酬を受け取る人は誰でも、老齢退職年金保険、遺族保険、障害保険、メディケア医療保険などの強制保険料を「社会保障税」(ソーシャルセキュリティー(SS)税とメディケア税)の形で納付する義務があります。給与所得者の場合は、FICA税として、給与が支給される度に連邦・州所得税と共に源泉徴収されます。会社は雇用者分として同額を負担して、従業員分と雇用者分の合計額をIRS(内国歳入庁)宛に納付します。自由業の場合は、自営業税としてSS税とメディケア税を所得税と共に自分でIRSへ払い込みます。

税率は、FICA税が雇用者分7.65%、会社分7.65%で合計15.3%、セルフエンプロイメント税が15.3%でです。SS税の上限課税対象額は、2013年11万3700ドル、2014年11万5500ドルであり、毎年消費者物価指数に基づいてインフレ調整されます。メディケア税には上限課税対象額が定められてなく、給与・事業所得の全額が課税されます。(13)

個人納税者番号ITIN

<Individual Taxpayer Identification Number 個人納税者番号>

労働許可のある外国人はソーシャルセキュリティー(SS)番号を取得できますが、ビザの種類によってはSS番号が発行されないことがあります。その場合にはSS番号のかわりに個人納税者番号(ITIN)を取得しなければなりません。例えば帯同家族の配偶者控除、扶養控除が認められるためには、ITIN番号が必要なのです。外国からの直接投資でアメリカから所得を受け取る場合、労働許可なしに所得税申告の必要がある場合などにも、やはりITIN番号を取得しなければなりません。

ITIN申請書フォームW-7は、SSオフィスではなくIRS(内国歳入超)で申請します。SS番号は身分証明に役立ちますが、ITIN番号は決して身分証明の代用にはなりません。2003年12月17日以降、税金申告目的を具体的に示すことができなければITIN番号の申請ができなくなりました。ITIN番号申請の際、税金申告書、投資資産の所有権を示す書類、租税条約軽減税率の対象所得を示す書類などの提出が義務付けられました。(12)

ソーシャルセキュリティー配偶者控除

<扶養控除とソーシャルセキュリティー番号 Dependent Exemption and Social Security Number>

アメリカでは子供が生まれるとすぐにソーシャルセキュリティー(SS)番号を申請・取得します。生まれた年から親が扶養控除を税金申告しますが、そのためにはSS番号が必要だからです。申告書には納税者本人、配偶者、扶養家族など家族全員のSS番号を記入しなければなりません。

結婚により配偶者の名前が変わったのに、SSカードの名義を変更していない場合は、旧姓で税金申告すべきです。IRSは申告氏名とSSカードの名義を照合して、合致しないと配偶者控除を否認するからです。合法的に労働が許可されたビザでアメリカに滞在する外国人は、必ずSS番号を取得する必要があります。SS番号を申請するためには、本人が必要書類を持参してソーシャルセキュリティー・オフィスに出頭しなければならなりません。必要書類とは、申請書、バスポート、有効なビザであり、最寄りのソーシャルセキュリティー・オフィスは Tel (800) 772-1213、Fax (888) 475-7000、Web. www.ssa.gov で調べることができます。(11)

ソーシャルセキュリティー番号 Social Security Number

<ソーシャルセキュリティー番号 Social Security Number>

ソーシャルセキュリティーとは、アメリカ連邦政府の社会保障制度のことです。当制度には老齢退職年金保険、遺族保険、障害保険、メディケア医療保険などが含まれています。そのためにアメリカ国民一人一人に割り当てられた9桁からなるソーシャルセキュリティー・ナンバーは、生涯にわたって同一番号を使い続けます。国民背番号と言えるほどアメリカではいつでもどこでも無くてはならない番号なのです。本来は社会保障制度の整理番号であったソーシャルセキュリティー・ナンバーは、その後納税者番号として役立つようになりました。雇用、源泉徴収、銀行口座、債券投資、不動産売買など、あらゆる税金関係の取引管理に不可欠です。さらに、学生証、運転免許証、選挙人名簿、パスポートなど、あらゆる身分証明目的にも使われています。個人のローン借り入れや返済状況を記録したクレジット・ヒストリーの役割も果たしているのです。(10)

ソーシャルセキュリティー

Copyright © 2014 Joe Oshima, CPA All Rights Reserved