日本の相続税14-特別受益制度

<日本の相続税(14)-特別受益制度>

故人の財産形成に貢献した人に相続加算される「寄与分制度」とは逆に、生前に故人から特別に受け取った財産の利益分を相続から減算調整することを「特別受益制度」といいます。例えば、父親の生前、長男は住宅購入資金の援助を受けたとします。父親の死後、相続人である長男と次男が残った財産を法定相続分通りに遺産分配すると不公平が生じます。

このような不公平をできるだけ少なくするように定められたのが当制度で、故人から特別な財産分与(生前贈与)による利益を受けた人(長男)のことを「特別受益者」と言います。「特別受益者」が受けた財産的利益を遺産額に加算した金額を法定相続分で配分した後、長男の相続分からその財産的利益を差し引いて、長男の相続分とします。(119)

日本の相続税13-寄与分制度

<日本の相続税(13)-寄与分制度>

同じ順位の相続人が遺産を均等に相続することが必ずしも妥当とは言えないケースがあります。相続人の中に、被相続人の財産の増加や維持に特別の寄与をした人がある場合は、遺産の分配にあたり、寄与分として別枠で遺産を相続できるようにするのが「寄与分制度」です。

例えば、長男は高校卒業後すぐに父親の後を継いで農業に従事し、それから30年間勤勉に働いてきました。一方次男は、大学を卒業して都会で結婚し、会社勤めをしています。年に一度手土産を持って孫の顔を見せに帰るだけです。父親が亡くなり、遺された財産は1億円で、そのほとんどが田畑などの農業用財産です。父親が財産を遺せたのも、要は長男が一生懸命に農業をしていたからです。したがって、遺産の名義は父親であっても、その中には相当程度、長男の労働による寄与分も含まれていると見ることができます。長男の寄与分が仮に4000万円とすると、残りの6000万円を長男と次男で相続分に従って配分することになります。

寄与分の金額は原則、相続人同士の協議で決めます。協議がまとまらないときは、家庭裁判所で決めてもらいます。(118)

日本の相続税12-指定相続分

<日本の相続税(12)-指定相続分>

相続人が二人以上いる場合に、被相続人は遺言によって法定相続分とは異なる相続割合を指定することができます。また、異なる相続割合を指定することを弁護士など第三者に委託することもできます。遺言で各相続人の相続分を指定することを「指定相続分」といいます。相続には被相続人の意思が優先されますから、「指定相続分」は法定相続分に先立って適用されます。法定相続分では妻には50%以上、子には均等割の財産が分与されますが、例えば、親の面倒を見てくれた子と冷たかった子とで差をつけたいという場合に活用できるのが「指定相続分」の制度です。

ただし、各相続人に対する最低限相続を保証する制度である遺留分に反するような、極端に不公平な「指定相続分」を指示することはできません。したがって、各相続人の遺留分がどのくらいかを確認してから「指定相続分」を指示する必要があります。遺留分は、法定相続分の2分の1または3分の1であり、兄弟姉妹については、遺留分はありません。

相続分の指定が一部の相続人だけにあった場合、他の相続人は残りの財産について法定相続分によって振り分けることとされています。(117)

日本の相続税11-法定相続例3 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

<日本の相続税(11)-法定相続例配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合>

 故人(被相続人)に子(やその代襲者である孫)も父母(やその代襲者である祖父母)もいないときは、配偶者と法定相続第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。この場合の法定相続分は、配偶者が全体の4分の3、兄弟姉妹が4分の1になります。兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1をその人数で分けます。片方の父母のみが同じである半血兄弟姉妹(異父・異母兄弟姉妹)は、父母を同じくする全血兄弟姉妹の相続分の2分の1しか相続できません。

兄弟姉妹の代襲相続人は、その子供、すなわち故人から見て甥や姪です。代襲相続人の相続分は、本来相続人となるべきであった被代襲者(兄弟姉妹)の相続分を、そのままの割合で受け継ぎます。複数の子供がいる場合は、その人数分で均等分します。(116)

日本の相続税10-法定相続例2 配偶者と父母が相続人の場合

<日本の相続税(10)-法定相続例配偶者と父母が相続人の場合>

 故人(被相続人)に子やその代襲者(孫)が一人もいないときは、配偶者と法定相続第2順位の父母(直系尊属)が相続人になります。この場合の相続分は、配偶者が遺産額の3分の2、父母(直系尊属)が3分の1になります。父母のどちらかが死亡により相続権を失っていた場合は、残りの1人が3分の1すべてを相続します。直系尊属の父母とは、もちろん故人(被相続人)の親ということですが、実父母、養父母の区別はありません。したがって、故人が養子だったならば、実の親と育ての親の双方が相続人になります。

直系尊属の父母とも既に死亡している場合は、かわりに祖父母が代襲相続人として相続します。その場合、父方、母方は関係がなく、全員が健在ならば4人で相続分を均等分することになります。(115)

日本の相続税09-法定相続例1 配偶者と子が相続人の場合

<日本の相続税(9)-法定相続例1   配偶者と子が相続人の場合>

故人(被相続人)が1億円の遺産を残し、配偶者と子2人が法定相続人である場合の相続分の具体例を見てみましょう。この場合の相続分の割合は、配偶者が2分の1、子(第1順位)が2分の1となります。ただし、子が2人いるため2分の1を均等にその人数である2で分けます。したがって、配偶者は、1億円の2分の1である5000万円、子は5000万円の2分の1である2500万円(4分の1)ずつが、各人の法定相続分となります。

子には実子だけでなく、法律上の子、すなわち養子も含まれます。認められる養子の人数には制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人です。また、非嫡出子(婚姻届を出していない男女間に生まれた子)にも相続権があります。非嫡出子が父親の相続人になる場合は、認知(戸籍上の届け出)されていることが必要です。さらに、嫡出子(正式婚の男女の子)の2分の1の相続分しかもらえません。上記の例で、子が2人ではなく3人いて、そのうち1人は非嫡出子とします。その場合の子の法定相続分は、2人の正式婚の子が2000万円ずつ、非嫡出子が1000万円となります。(114)

日本の相続税08-法定相続分の割合

<日本の相続税(8)-法定相続分の割合>

法定相続分は、誰が相続人であるかによって相続割合が異なり、順位が高いと相続割合も多くなっています。

法定相続分の割合

相続人 法定相続分                留意点
配偶者と子(直系

卑属)の場合

配偶者  1/2

子    1/2

①        子が複数の場合は、相続分は均分(頭割り)となる。

②        非摘出子の相続分は摘出子の2分の1となる。*

配偶者と父母(祖父母)(直系尊属)

の場合

配偶者  2/3

父母   1/3

①        父母、祖父母が複数の場合は、相続分は均分(頭割り)となる。

 

配偶者と兄弟姉妹

の場合

 

 

配偶者  3/4

兄弟姉妹 1/4

①        兄弟姉妹が複数の場合は、相続分は均分(頭割り)となる。

②        父母の一方を同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、

父母の両方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の2分1

となる。

*摘出子:本妻の子(含養子)。非摘出子:正式な婚姻関係以外の子。

日本の相続税07-法定相続分

<日本の相続税(7)-法定相続分>

人が亡くなった時、遺族の誰がいくらの財産を相続するかが問題となります。それぞれの相続人の遺産に対する権利の割合のことを「相続分」と呼びます。遺されたのが配偶者だけで子も親も兄弟もいない場合や、子供一人だけの場合は、一人の相続人が全財産を相続するため、相続分は問題になりません。相続分が問題となるのは相続人が二人以上いる場合です。

遺言なしに人が亡くなった場合、故人(被相続人)の意思を法律によって推定して相続分を定めた「法定相続分」に従って相続することとされています。一般に相続分という場合、「法定相続分」を指しています。その割合は、誰が相続人であるかによって異なります。配偶者と子が相続人である場合の相続分は、配偶者が2分の1、子が2分の1です。子が2人以上の場合は2分の1を均等に分けます。配偶者と父母・祖父母の場合、相続分は配偶者が3分の2、父母・祖父母が3分の1です。配偶者と兄弟姉妹の場合、相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。(112)

日本の相続税06-相続欠格と相続廃除

<日本の相続税(6)-相続欠格と相続廃除>

相続人に一定の重大な非行があった場合、相続人としての資格を失います。これを「相続欠格」と言います。被相続人やほかの相続人の生命を侵害して相続財産を独占しようとした場合のほか、詐欺や脅迫によって被相続人の遺言に干渉し、有利に相続しようとする行為も欠格の原因となります。相続権のある者に欠格原因があれば、それだけで相続資格が無くなるため、特に裁判所の決定などの手続きを必要としません。

相続欠格ほどではないが、相続人となるべき者に一定の非行があった時は、被相続人の意思により、家庭裁判所へ申し立てをして、相続権を奪う制度があります。これを「相続廃除」といいます。「相続廃除」の原因は次の3つです。

①      被相続人に対して虐待(ぎゃくたい)したとき。

②      被相続人に対して重大な侮辱(ぶじょく)を与えたとき。

③      そのほか著しい非行があったとき。

相続人となる予定の者のうち、遺留分(最低限度の相続割合)がある配偶者、子、父母が相続排除の対象となります。兄弟姉妹は、慰留分がなく、相続排除の対象となりません。(111)

日本の相続税05-代襲相続

<日本の相続税(5) 代襲相続>

 故人(被相続人)の子が相続開始以前に既に死亡している場合は、死亡した子の子、つまり被相続人の孫に相続権が移ります。この場合の孫を「代襲相続人」、死亡した子を「被代襲者」といいます。身代わりの相続人である孫は、死亡した子と同じ第一順位の血族相続人とみなされます。代襲相続人となる孫がいるときは、第二順位の父母(直系尊属)と第三順位の兄弟姉妹は相続人になることができません。

被相続人に子がなく、父母も既に死亡している場合は、兄弟(姉妹)が相続人になります。兄弟が既に死亡しているケースでは、その子であるおい(またはめい)が兄弟に代わって相続人になります。この場合、おいが「代襲相続人」であり、死亡した兄弟が「被代襲者」となります。「代襲相続人」となるべきおいも既に死亡していた場合は、再代襲は認められず、おいの子は相続人になりません。子の代襲相続人になるべき孫が死亡していた時は、ひ孫がというように再代襲が繰り返し認められますが、兄弟姉妹の代襲は、おいかめいの段階で打ち切られます。(110)

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