日本の相続税24-相続 遺留分制度

<日本の相続(24)-遺留分制度>

遺留分制度は、相続人に最低限相続を保証する制度です。故人の最後の意思を尊重して、遺言通りに財産を振り分けるのは望ましいことです。しかし、自由に処分できるからといって、例えば遺族(相続人)には歓迎できない他人へ、財産のすべてを渡すという遺言が残された場合、妻子は自宅を明け渡してすべての財産をその受遺者に与えなければならず、相続権があるのに遺産を相続できないという結果を招きます。故人の自由な意思を無制限に認めると、非人道的とさえ言えることが世の中にまかり通ってしまいます。

そこで民法は、遺族の生活保証や財産形成への貢献を考慮して、財産が自由に処分されることによって遺族の生活が脅かされることがないよう、相続権の最低限の保護を定めた「遺留分制度」を設けています。遺留分は、故人が自分の意思で処分できない財産の割合であり、故人の財産処分の自由と相続人の保護の調和を図り、一定割合の相続財産を相続人に留保することにより、遺言に対してある程度の制限を加える効果があります。遺留分がある相続人は、侵害された遺留分について減殺請求という形で返還を求めることができます。(129)

日本の相続税23-相続 遺言書の証人

<日本の相続(23)-遺言書の証人>

遺言書を作成する際、二人以上の証人が必要となります。証人は、遺言書の内容を確認、証明しなければならないため、誰でもいいというわけにはいきません。正常な判断能力がない者と、遺言内容や相続に利害のある者は証人になることはできません。

証人には、次の人以外の者がなることができます。

①      未成年者。

②      禁治産者および準禁治産者。

③      推定相続人(遺言者が死亡すると、当然に相続権がある者)および受益者(遺言で財産を受ける者)。

④      推定相続人および受益者の配偶者および直系血族。

⑤      公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および雇い人。

通常は、信頼できる弁護士、会計士、税理士、親戚、知人などが証人になります。なお、証人は遺言書作成の立会人であって、借金の保証人のような責任は一切ありません。

公証人とは、日本の「公証人法」という法律に基づいて法務大臣が任命した公務員のことです。民事に関する公正証書を作成する権限などを持っていて、その多くは裁判官や検察官などの退職者が任命されています。(128)

日本の相続税22-相続 秘密証書遺言

<日本の相続(22)-秘密証書遺言>

秘密証書遺言は、遺言内容を記した書面に遺言者が署名、押印し、二人以上の証人立会いのもとに公証人

に封書を提出して成立します。自筆である必要がなく、弁護士に頼んで作ってもらうことができます。また、弁護士の原案をもとに誰かに書いてもらってもよく、タイプやワープロで打ってもかまいません。

公正証書遺言の場合は、本人が遺言の内容を公証人に口述しなくてはならないため、言葉の話せない人には不可能ですし、自筆証書遺言では本人が文字を書けなくては作成できません。秘密証書遺言ならば公証人に口述する必要もなく、また自分で書く必要もありません。必要なのは遺言の最後に遺言者本人が署名押印するだけです。文字を訂正するときは、その箇所に遺言者が押印したうえ署名します。

完成させた遺言書を封筒に入れ封をして、中の書面に押したのと同じ印鑑で封印します。この封筒を公証

役場へ持参し、証人二人以上が同席の上、公証人にこれが自分の遺言書であることと、弁護士、代理人など実際に作成した人の住所氏名を伝えます。公証人は、封書提出日と遺言者の申述を封筒に記載し、署名押印します。(127)

日本の相続税21-相続 公正証書遺言

<日本の相続(21)-公正証書遺言>

公正証書遺言は、遺言者が公証人と証人二人以上の立会いのうえ、口頭で述べた内容を、公証人が公正証書として作成するものです。原本が公証役場に保存されるため、紛失、偽造、変造の心配がありません。ただし、二人以上の証人が必要なため、自筆証書遺言のように、遺言内容を秘密にしておくことはできません。

公正証書遺言を作成するには、遺言者が公証役場に、証人二人以上と共に出向く必要があります。遺言者の病状などによっては、公証人に自宅や病院に来てもらうこともできます。遺言者が遺言の内容を公証人に口述し、公証人はこれを筆記します。公証人はそれを遺言者および証人に読み聞かせます。遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したのち、各自が署名押印します。遺言者が病気などで署名できないときは、公証人がその理由を付記し署名に代えます。公証人はその証書を法律の定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名押印して公正証書遺言が完成します。(126)

日本の相続税20-相続 自筆証書遺言

<日本の相続(20)-自筆証書遺言>

自筆証書遺言は、遺言者が遺言したい内容の全文と日付と氏名を自筆で書いて、印鑑を押した遺言書のことです。必ず自筆でなければならず、タイプやワープロなどで作成したものは無効となります。日付印を押したものや日付が無記入のものも無効です。氏名は本名以外のペンネームなどでも、遺言者が特定できれば有効とされます。押印は不可欠ですが、実印である必要はなく、認印や拇印でもかまいません。

様式は決まっていないため、タテ書きでもヨコ書きでもどちらでもかまいません。用紙にも制限がなく、便箋、罫紙、半紙などどれでもかまいません。筆記具もボールペン、万年筆、毛筆などどれを使用してもかまいません。鉛筆で書いても有効ですが、文字を簡単に消すことができるため、適当ではないでしょう。

加除訂正するときは、訂正箇所を明確にし、その箇所に押印したうえ署名します。証人や立会人は必要ありません。遺言書を封印するか否かは自由ですが、封印のある遺言書は家庭裁判所で開封してもらいます。また、内容の偽造や変造を防ぐために、家庭裁判所で遺言内容の検認をしてもらう必要があります。(125)

日本の相続税19-相続 遺言の方式

<日本の相続(19)-遺言の方式>

遺言は、本人の意思を死後に実現させる制度ですから、遺言者の真意が明確に伝わるものでなければなりません。そのため、民法では、厳格に書面の方式を定め、それに従ったものだけを有効な遺言として認めています。口頭による遺言や、テープに吹き込んだものなどは一切法的な効力を有しません。遺言の方式として、普通方式と特別方式があります。遺言は通常、普通方式の遺言のことをいいます。特別方式は、死亡の時期が危急に迫っているとか、病気その他の都合で隔絶されている場合など、特殊な状況下に置かれた時に限って認められる、簡易的な遺言方法です。

普通方式の遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つがあり、本人が自筆で書く場合、公証人が公正証書として作成する場合、証人不用の場合、証人が必要な場合、家庭裁判所の検認を必要とする場合など、それぞれ要件が異なります。(124)

日本の相続税18-相続 遺言事項

<日本の相続(18)-遺言事項>

遺言できる事項は、勿論被相続人の自由なのですが、法的に認められる事項には制限があります。これを遺言事項と言い、次の通り、遺贈などの財産処分に関すること、相続分の指定など相続そのものに関すること、そして、後見人の指定など身分に関することの三つがあります

①      財産の処分方法(遺贈)。

②      婚姻届を出していない女性との間にできた子を自分の子と認知する。

③      自分に対してひどいことをした相続人、または、著しい非行のあった相続人の相続権を廃除する。

④      相続分の指定。

⑤      遺産分割の仕方の指定。

⑥      遺産分割の禁止(死後5年間有効)。

⑦      遺言執行者の指定。

⑧      後見人、後見監督人の指定。

⑨      相続人相互の担保責任の指定。

⑩      遺贈分減殺方法の指定。

(123)

日本の相続税17-相続 遺言

<日本の相続(17)-遺言>

遺言とは、生前における人の最後の意思を、死後、法律的に保護し実現を図ると同時に、相続人同士の争いを避けるための制度です。相続対策には、節税することだけでなく、家族間の争いのない相続ができるように考えておくことも含まれます。法的に有効な遺言書がある場合、相続人はそれに従わなければなりません。遺言書に書かれた相続分の指定は、民法が定める法定相続よりも優先されます。

遺言が特に必要となるケースとして、配偶者や子など相続人の中に特別に財産を与えたい者がいる場合、または特別に与えたくない者がいる場合、相続権のない孫、兄弟、子の嫁、第三者などに財産の一部を分け与えたい場合、同属会社や個人事業者で後継者を指定しておきたい場合、遺産を公益事業に役立たせたい場合などがあります。いずれも争いが予想され、あるいは、遺言が無ければ実現しない事柄です。

相続税よりも高率の贈与税が課税されるため、または、他の相続人や身内の目が気になるため、生前贈与は避けたいという場合に、どうしても遺言を書かざるを得ません。(122)

日本の相続税16-死因贈与

<日本の相続税(16)-死因贈与>

「死因贈与」は、贈与者(財産を与える人)と受贈者(財産を受け取る人)との間の契約によって成立します。贈与者の死亡によって財産を契約通りに受贈者が受け取るのが「死因贈与」です。通常、贈与には贈与税が課されますが、死を原因とする贈与契約である「死因贈与」は、遺産と同様に考えられるため、相続税が課されます。すなわち、「相続」や「遺贈」ばかりでなく、「死因贈与」によって故人の遺産を受け取った時にも相続税がかかるのです。

「遺贈」は、遺言者の一方的な意志によるものであるため、気が変われば遺言書を書き変えて遺産の譲り渡しを取り止めることもできます。一方、「死因贈与」の場合は、受贈者との契約であるため、勝手に契約を破棄することはできません。いずれにしても、「遺贈」も「死因贈与」も、人が死亡することによって財産を得るため、基本的には相続と同等の扱いを受け、相続税が課されるのです。(121)

日本の相続税15-遺贈

<日本の相続税(15)-遺贈>

相続が開始されて、その相続財産が一定金額以上あると相続税がかかってきますが、相続によって財産を得たときだけに相続税がかかるわけではありません。相続のほかに、「遺贈」と「死因贈与」という2つのケースのときにも相続税がかかります。

「遺贈」とは、一定の方式に従った遺言書によって財産を人に譲ることをいいます。遺言者の死亡と同時に一方的に特定人物(受遺者)に財産が与えられます。遺贈の相手に関しては制限がなく、相続人はもちろんのこと、相続権のない親族、血縁関係のない第三者や会社など、誰でも受遺者として指定できます。遺産全体の割合を示して遺贈する「包括遺贈」は、指定された割合で遺産を引き継ぐ権利を持つことになるため、受遺者は立場的に相続人と同等になります。したがって、故人に債務があれば、それを負担しなければなりません。(120)

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