日本の相続税34-相続 遺産分割協議の延期

<日本の相続(34)-遺産分割協議の延期>

 配偶者は、法定相続分(遺産の50%)または1億6000万円のどちらか大きな額について、相続税がかからないという特例を適用できます。相続税の申告期限(相続開始の翌日から10ヵ月以内)までに遺産分割の話し合いがまとまらない場合、その時点で配偶者の税額軽減の特例を受けることはできません。

遺産が未分割であっても、各相続人は法定相続分などの割合に従って遺産を取得したこととして期限内申告を済ませて納税をします。その際、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付提出すると、未分割だった遺産が申告期限から3年以内に分割された場合、分割日から4ヵ月以内に更正の請求を行うことにより、配偶者の税額軽減の特例を受けることができるようになります。過去の納税額が過大であった場合には、過払額について還付を受けることができます。

3年経過時点において訴えの提起がされているなど一定のやむを得ない遺産未分割の事情がある場合は、その旨の承認申請書を提出し所轄税務署長の承認を受けると、更正の請求を判決の決定まで延期することが認められます。(139)

日本の相続税33-相続 遺産分割協議書

<日本の相続(33)-遺産分割協議書>

遺産分割の協議が成立したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、「誰が、何を、どれだけ相続するか」を記した書類です。内容が明確であれば、縦書きでも横書きでも、筆記やワープロで作ってもよく、書式は自由です。ただし、相続人全員の署名と印鑑証明を受けた実印による押印が必要です。

預貯金名義の変更、相続税申告書の提出、および不動産の所有権移転登記には、相続を証する書面として遺産分割協議書を必要とします。また、配偶者法定相続分非課税や小規模宅地等の特例などの相続税軽減措置を受けるためには、必ず遺産分割協議書を添付する必要があります。相続税申告や不動産移転登記がなく、相続人の間で後日遺産分割に関する争いが生じる恐れのないときは、遺産分割は必ずしも書面がなくでもかまいません。

なお、被相続人の生前(相続開始前)になされた分割協議は、法律上の効力を持っていません。相続に関する具体的な権利は被相続人の死によって発生するものだからです。生前の分割協議に異議をとなえる相続人の主張を無視したり、阻止したりすることはできません。(138)

日本の相続税32-相続 遺産分割協議(4)-分割方法

<日本の相続(32)-遺産分割協議(4)–分割方法>

遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割の3通りがあります。

「現物分割」は、「不動産を配偶者に」「株式1万株を長男に」「宝石を長女に」というように、相続財産の形を変えずに、相続人一人ひとりの取得財産を具体的に決める方法です。一般に行なわれている遺産分割は、ほとんどがこの方法であり、最も基本となる配分のやり方です。

「換価分割」は、相続財産の全部を処分して金銭に替え、一円単位まで細分に各相続人に分配する方法です。土地や建物を売却すると、相続人の全員に譲渡所得税と住民税がかかってきますから、その分財産が目減りすることになります。

「代償分割」は、特定の相続人(例えば長男)が遺産の大部分(例えば不動産)を取得する代わりに、相続分を越えた額について、他の相続人に金銭など他の財産を与える方法です。例えば、相続財産の大部分が事業用資産で占められていて、後継者以外の者が相続しても意味がない場合の分割方法です。注意しなければならないのは、代償者(長男)の支払能力です。分割協議が成立した後に支払いできないとなると、かえってトラブルが起きてしまいます。(137)

日本の相続税31-相続 遺産分割協議(3)-「寄与分制度」と「特別受益制度」

<日本の相続(31)-遺産分割協議(3)-「寄与分制度」と「特別受益制度」>

被相続人の財産の維持、形成、および増加に特別に寄与・貢献してきた法定相続人を「特別寄与者」として認め、遺産の分配にあたり「寄与分」として法定相続分を超える額の財産を取得できるように協議で計らうことを「寄与分制度」といいます。例えば、長男が故人を助けて事業の発展に寄与してきた場合です。寄与分は、特別寄与者の当然の権利として認められるのではなく、相続人同士の協議で認められるもので、その内容や程度についても協議の中で決められます。

「寄与分制度」とは逆に、故人からの生前贈与や遺言による財産の贈与が与えられたため、その法定相続人が既に相続財産を受け取った者として扱われることを「特別受益制度」といいます。例えば、父親の生前、住宅購入資金の援助を受けると、特別な相続分の前渡しを受けた「特別受益者」とされ、その分が相続分から差し引かれます。特別受益がどの程度のものか、どんな場合に相当するのか、寄与分制度と同様、明確な客観的基準はなく、あくまでも相続人同士の話し合いで決めることです。(136)

日本の相続税30-相続 遺産分割協議(2)

<日本の相続(30)-遺産分割協議(2)>

法定相続人の中に未成年者がいる場合、本人が単独で遺産分割協議に参加することはできません。法律上、未成年者は契約を結ぶ場合、法定代理人が必要となります。通常、親が未成年者の法定代理人になりますが、遺産分割では親は法定代理人になれません。親も相続人である限り、利害関係がからむ恐れがあるからです。この場合、家庭裁判所によって選定された特別代理人と親との間で遺産分割協議をします。

遺産分割協議には法定相続人の他に、故人から包括的な遺贈を受けた人(包括受遺者)、および、相続分の譲渡を受けた人(相続分譲受人)も参加します。一部の法定相続人を除外したり、その者の意思を無視した協議分割は無効になります。

次の場合、遺産分割協議自体を行うことができません。

(1)      法定相続人の中に胎児がいる場合。この場合、胎児が生まれるのを待って、その後代理人を立てます。

(2)      遺言で遺産分割協議をすることが禁止されている場合。

法定相続人全員で遺産分割協議をすることを禁止した場合。(135)

日本の相続税29-相続 遺産分割協議(1)

<日本の相続(29)-遺産分割協議(1)>

相続人の中の一人からでも要求があれば、すべての相続人が互いに話し合って遺産分割を決めます。指定相続分や法定相続分が決められているのに、相続人同士の話し合いで自由に遺産分割の割合を変えられるというのは、矛盾しているようにも感じられます。しかし、指定相続分および法定相続分はあくまでも各相続人の取り分の限度で、その分に関して相続人はいつでも自分の権利を主張できます。したがって、財産の一部または全部を放棄するのも自由です。

遺産分割協議開始の呼びかけは相続人の誰であってもかまいませんが、相続人全員の協議への参加が絶対条件です。一人でも欠けていたらその協議は無効とされます。必ず本人が協議に参加しなければならないというわけではなく、代理人を立てることができます。全員が一堂に会して協議するのが普通ですが、書類を郵送することで書面による協議を行うことも可能です。相続争いの原因となる要素が最も多いとされている遺産分割は、遺産の内容・性質、相続人の心身状態・年齢・職業・生活形態など、あらゆることを考慮して話し合いが行なわれることが大切です。(134)

日本の相続税28-相続 遺言による指定分割

<日本の相続(28)-遺言による指定分割>

 相続人が二人以上いる場合、被相続人は生前に遺言によって法定相続分とは異なる相続割合を指定することができます。指定相続分による遺産分割のことを指定分割といいます。法定相続分は、あくまでも遺言がない場合の補助的な基準であり、故人の意思が尊重されますから、指定分割は法定相続分による分割よりも優先されます。

相続財産のすべてについて相続分を指定することも、一部の相続人の取り分についてだけ指定することもできます。相続分の指定が一部の相続人だけであった場合、他の相続人は残りの財産について法定相続分によって分けることとされています。例えば、妻と子供2人、遺産額1億円と「遺産の4分の3を妻に与える」という遺言を残して夫が死亡したとします。この場合、妻の相続分は7500万円、子供の相続分は残りの1250万円を等分して、それぞれ1250万円になります。

相続人の最低限相続を保証する制度である遺留分を侵害する相続分の指定が遺言によってなされた場合、遺言そのものは有効ですが、遺留分権利者は申し立てにより侵害分の取り戻し請求をすることができます。(133)

日本の相続税27-相続 遺産分割

<日本の相続(27)-遺産分割>

相続人が複数いる場合、相続開始時点で各相続人の相続分に応じて遺産を共有していることになります。現金、土地、家屋、預貯金から債務まで共有している財産を、それぞれの相続人の所有物として確定する手続きのことを「遺産分割」といいます。遺産分割の期限の定めはなく、相続税が生じないのであれば遺産分割を確定させなくても問題はありません。「配偶者は法定相続分まで相続しても相続税はかからない」という税額軽減の特例を受けるためには、原則として相続税の申告期限までに遺産分割しなければなりません。相続財産を処分する場合や担保に入れる場合も、遺産分割が必要です。

遺産分割を行うには相続財産を正確に把握し、それぞれの財産の価値を算定しなければなりません。遺言があれば、指定された相続分にしたがって分割(指定分割)し、遺産がなければ法定相続分にしたがった割合で分割するのが原則です。相続人全員の同意があれば、協議によって分割することもできます(協議分割)。相続人の間で遺産分割協議をしても合意が得られなかった場合は、家庭裁判所の調停または審判にしたがって分割します(調停分割・審判分割)。(132)

日本の相続税26-相続 遺留分の減殺請求

<日本の相続(26)-遺留分の減殺請求>

遺留分を侵害する遺言が実行された場合、不利益を被る相続人は遺贈や贈与を受けた相手方に対して財産の取り戻しを請求することにより救済されます。これを遺留分の「減殺請求」といいます。

相続開始および遺贈や贈与があったことを知った日から一年以内に、遺留分の減殺請求を行わなければ、時効によって請求権が消滅します。相続から10年経つと、遺留分の侵害があったことを知らなくても時効により消滅します。請求権を行使するためには、訴えを起こすといった面倒な手続はいらず、相手方に財産の取り戻し(減殺)請求をするという意思表示の通知をすれば法律上の効力が生じます。意思表示の時期や内容を明確にしておくため、「内容証明郵便」で行います。相手方が請求に任意に応じない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをする必要があります。

遺贈と贈与があった時は、遺贈を先に減殺します。それでも遺留分に満たない場合に贈与を減殺します。遺贈が複数ある場合は、価格の割合に応じて減殺しますが、遺言で順序が定められていればそれに従います。贈与が複数ある時は、契約時点を基準にして後の贈与から減殺します。(131)

日本の相続税25-相続 遺留分の割合

<日本の相続(25)-遺留分の割合>

遺留分は、相続人であれば誰にでも与えられるわけではありません。相続人が配偶者、子およびその代襲者、父母(直系尊属)である場合には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。

相続人に保証されている遺留分の割合は、配偶者および子とその代襲者は、相続財産の2分の1、父母(直系尊属)は3分の1と定められています。この割合は法定相続人全体に残される分を示しているので、相続人が複数いる場合は、この遺留分をさらにそれぞれの割合で分けることになります。

相続人が配偶者だけのときは、遺留分は2分の1です。配偶者と子がいるときは2分の1を分け、配偶者4分の1、子4分の1となり、子が複数のときは4分の1を頭割りにします。相続人が子だけのときは、遺留分は2分の1(複数のときは頭割り)です。(130)

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