賃貸損金の繰り延べ Rental Loss

<賃貸損金の繰り延べ Rental Loss Carryover>

 前回まで、レンタル・ロスはレント収入よりも必要経費の方が多い場合に計算されること、レンタル・ロスを他の所得と損益通算するには一定条件を満たさなければならないことを学びました。年収15万ドル以上の高額所得者のレンタル・ロス、年間上限額2万5000ドルを超過するレンタル・ロスなど、損益通算が認められなかった金額は、翌年に繰り延べられます。繰延年数には制限が設けられていません。すなわち、レンタル・ロスが損益通算の恩典を受けることができる年度まで、何年でも繰り延べられます。

家賃の値上げや必要経費の減少などにより、ネット・レントが赤字から純利益に転じた年度に、繰り延べられてきたレンタル・ロスを相殺控除することができます。それでもレンタル・ロスが残っている場合、

貸していた住宅を売却した際に計算される売却益(キャピタル・ゲイン)の計算上、控除することができます。レンタル・ロス繰延額は、古い年度から順番に損益通算されていきます。税務申告書、計算書などを大切に保管しておくことのがいかに重要かがここでも分かります。(31)

消極的欠損の制限 Passive Loss Limitation

<消極的欠損の制限 Passive Loss Limitation>

 レント収入よりも必要経費の方が多いために発生するレンタル・ロスは、賃貸活動への積極的関与の条件を満たせば、給与、利子、配当、自営業事業所得などの他の所得との損益通算が認められます。ただし、損益通算には上限額が設けられていて、年間最高2万5000ドルまでとなっています。レンタル・ロスが2万5000ドル以上計算されても、損益通算に使えるのは2万5000ドルまでということです。超過額は翌年以降に繰り延べられます。

調整総所得(ほぼ年収に相当)が10万ドル以下の納税者は、2万5000ドルのレンタル・ロス全額を他の所得と損益通算できます。所得が10万ドルを超えると、損益通算できる金額は段階的に減額します。減額率は、所得増加が2ドルにつき1ドル削減という割合です。所得が15万ドルに達すると、レンタル・ロス損益通算額はゼロになります。すなわち、年収15万ドル超の高額所得者はいくらレンタル・ロスがあっても、他の所得との損益通算は一切認められないわけです。(30)

不動産賃貸損 Real Estate Rental Loss

<不動産賃貸損 Real Estate Rental Loss>

 レント収入よりも必要経費の方が多額の場合は、ネット・レントは「レンタル・ロス」(赤字)となります。レンタル・ロスを給与、利子、配当、自営業事業所得などの他の所得と損益通算(相殺)できれば、税金が少なく計算されて節税になります。ところが、レンタル・ロスになったら誰でも節税できるというわけではなく、年収15万ドル以上の高額所得者はレンタル・ロスと他の所得との損益通算の恩恵が受けられないという制限規定(Passive Loss Limitation 消極的損失の制限)が適用されます。

レンタル・ロスと他の所得との損益通算が認められるためには、高額所得を得ていないことという条件の他に、納税者が積極的に賃貸活動に関与していることという条件を満たす必要があります。管理会社が間に入っている場合でも、テナントの募集、テナントとの交渉、修理の手配などに関して常に決定権を行使していれば、賃貸活動に関与していることとなります。何もかも管理会社まかせという場合は、積極的に賃貸活動に関与したことにはなりません。(29・394)

不動産の減価償却費 Depreciation of Real Estate

<不動産の減価償却費 Depreciation of Real Estate>

 減価償却費は、ネット・レントを計算する際の必要経費の中でも比較的金額が高い場合が多く、課税対象となる純利益を少なく計算するための重要な要素となります。減価償却は、時の経過あるいは使用によってその価値が減少する固定資産に適用され、不動産がこれに該当します。

まず住宅の取得費のうち、土地該当部分を除いて建物部分のコストを把握します。住宅の取得費は、住宅の取得価格に取得時の取得費用とその後の改築費を加えた金額です。不動産に減価償却が適用されるのは建物部分だけであり、土地部分は減価償却できないという決まりのため、住宅の取得費を建物と土地とに分離する必要があります。減価償却費は、「耐用年数」を27.5年で、「償却方法」を定額法で計算します。すなわち、毎年、27.5分の1ずつ減価償却費として控除が認められます。この計算は、鉄筋、木造、新築、中古の区別なく、一様に適用されます。日本にある住宅のレント収入を、アメリカの税務申告書上報告する場合の建物部分の減価償却は、耐用年数40年、定額法で計算します。(28)

不動産賃貸必要経費 Real Estate Rental Expenses

<不動産賃貸必要経費 Real Estate Rental Expenses>

 レント収入から差し引いてネット・レントを計算するための必要経費とは、文字通りレント活動に必要なあらゆる経費を指します。1月1日から12月31日までの期間、またはレント収入に対応する期間に支出した金額です。代表的なものとして、固定資産税、住宅ローン支払利子、修繕費、管理費、維持費、保険料、減価償却費があります。コープのメインテナンス、コンドのコモンチャージ、ホームオーナー・アソシエーション・フィー、不動産管理会社のコミッション、家具の減価償却費、庭師費用もあります。また、オーナー家主がテナントのために支出した水道光熱費、電話代、除雪費用、ドアマン等へのチップ、旅費交通費なども含まれます。

友人や家族・親戚など家を貸して、公正な市場価格よりもはるかに低い値段でレントを受け取った場合は、必要経費として控除が認められるのは、レント収入の金額までとなります。レント収入を超える経費の控除は一切認められず、結局個人負担することになります。(27)

不動産賃貸の報告 Real Estate Rental Reporting

<不動産賃貸の報告 Real Estate Rental Reporting>

 住宅を人に貸してレント収入を受け取っている場合、レント収入がそのまま税金の対象になるのではなく、レント収入からあらゆる必要経費を差し引いて、ネット・レント賃貸純利益の金額が課税対象となります。

ネット・レントは、給与、利子、配当、自由業事業所得など、他のすべての所得と合算されて、10%から
39.6%までの6段階の通常の連邦所得税率が適用となります。

居住者は、アメリカにある住宅からのレント収入も、日本などアメリカ国外にある住宅からのレント収入も、同様な方法でネット・レント純利益を算出し、その金額を他のすべての所得と合算した合計額が通常の連邦と州の個人所得税の対象となります。外国で税金が課されている場合は、外国税額控除のしくみを適用することによって、連邦税から外国税を差し引くことが認められ、二重課税の回避が達成されます。

レント収入よりも必要経費が多いためネット・レントが純損失になる場合は、特別規定(後述)が適用されるため、注意を要します。非居住者のレント収入の課税方法も異なります。(26)

不動産賃貸

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